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【詩】花火②

川辺の道に、人波がひしめいて
くろい水面が、揺れている
かくれた、種火の仕掛けから
標的のない、夜空に放った航跡を
飽くことなく、追いかけている

ざわめき、待ちわびていた
火の明滅に、息をのむ
炸裂に、白々と照らされて
後ろ姿が、浮かんでいる

耳をかすめる、飛翔の魔笛
大地を揺るがす、爆破の怒声
空に散らす、破裂のつぶて

闇をいろどる、火焔の花に
束の間、虚空に浮かんだ一瞬の
奥行きを、みつめている
またたく雨に、言葉をわすれ
降りそそぐ、燃え殻の
舞う残り火に、酔いしれる

耳打つ連射の、渇いた音に
振り向けば、月が浮いている
照らした雲の、かげのすき間を
遠い、荒れ野の風が吹く

くすぶる、煙が鼻をつく
立ちのぼる、殺意ののろし
見ず知らずの、どこかに向けて
放たれ、翔んで
手の届かない、むこうがわで
見境なく、破壊して
惨たらしく、亡くしてしまう

妄想は、虚飾の写し絵だ
火球の花は、破滅のまぼろし
刹那の、慰めにすぎない

波が、しずかに流れていく
灯に照らされ、夜風にまかせ
あてもなく、うごめいて
繰り返し、手さぐりしている
嵐の気配に、胸騒ぎして

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。