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【詩】ヒア・カムズ・ザ・サン

東向きのベランダで、眺めていた
明けきらぬ空に、雲がたれこめている
澄んだ空気が、凍てついて
かじかむ指が、しびれている
呼吸をとめて、こわばりを震わせる
 
空の果てに、一条の陽が射した
雲と雲の重なりの、むこうに
赤々と燃える、気配が見える
まだ、感じられない温もりが
密やかに、手探りしている
いくつもの、光の束が
雲の、すき間を切り裂いていく
空の色は、みるみる明けて
燃えさかる、かなたのフレアが
燦々と、降り注ぐ
遠い遠い、真正面から
放たれて、届いてくる
まぶしすぎる、強烈なしぶきを
凍てつく大地に、浴びせかける
 
鳥が、空に羽ばたいていく
風の、波音が騒ぎはじめた
人の、影が動きはじめる
往来の、音が走りはじめた
手に、温もりがかよいはじめる
瞑っていた、まばたきが見開いた
俯いていた、もの思いが空を見上げる
竦んでいた、息づかいが背伸びする
 
今日をまわす、レバーが上がった
新たな一日が、動きはじめる
キラキラと、踊りはじめた
新しい時間が、歌っている
 
ヒア・カムズ・ザ・サン
(ビートルズが鳴っている)


©2022 Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。