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【詩】押切橋

武蔵野の野川の源流
ひとつめの橋
住宅街でありながら
清らかなせせらぎが走る
深々とした谷
歩いて数歩にも満たない
小さな、なにげない通り道
かつては奔流にさらされ
かけても、かけても
押し切られたという
橋に至る東西の崖は
急峻な坂道で
足が、わななく
くだるときは
踏ん張り
のぼるときは
踏み締める
橋をわたるときは
上流の森に
鳥が飛んでいるような
斜面に照らす太陽は
とてもまぶしい
夜の月あかりは
なおも、あざやかだ
谷を見下ろす坂の入り口で
見はるかす向こうへ
ためらいを
押し切る


©2022 Hiroshi Kasumi


お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。