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イメージの百人一首6「かささぎの―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第6首】
かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きをみれば 夜ぞふけにける
《かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける》

 あなたの目の前に階段があります。宮殿へと続く階段です。その階段に霜が降りています。季節は冬、今は夜です。あなたは、夜の黒さと霜の白さから、かささぎという鳥を想像します。かささぎは、カラスの仲間ですが、カラスより小型で、黒色の尾を持ち、肩から胸と腹にかけては白い毛を持ちます。そのかささぎには、七夕にまつわる伝説があり、織姫を彦星のもとへと送り届けるべく、翼をつらねて天の川を越える橋となったそうです。

 その伝説を思い出しながら、あなたは、今目の前にある階段――階《はし》――が、まるで、その伝説の、かささぎの作った橋のように思われます。そう思われるのも、霜の白さを引き立たせるほど、夜の闇が濃いからで、そのときあなたは初めて、夜が更けたことに気がつくのです。

 中納言家持《ちゅうなごんやかもち》

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