イメージの百人一首74「憂かりける―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第74首】
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
《うかりける ひとをはつせの やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを》

 あなたは辛い恋をしています。いくら思いを寄せても、あの人はつれない仕草、一向に気持ちが届く当てがありません。そこで、あなたは初瀬(=今の奈良県)の観音様にお祈りします。「どうか、あの人の気持ちがわたしになびくように」と。

 ところが、なんということでしょうか、そのあと、あなたに対する思い人の態度は和らぐどころか、いっそう冷たいものとなりました。その激しさときたら、まるで山から吹き下ろされる風のようです。あの人が冷たくしてくれますようになんて祈ったつもりはないのにと、あなたは、途方に暮れます。

 源俊頼朝臣《みなもとのとしよりあそん》

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