イメージの百人一首10「これやこの―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第10首】
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
《これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき》

 あなたの前に関所があります。ここを越えるともう都ではなくなって、東国となる逢坂《おうさか》の関です。一般の人にとって、都はなじみのある場所ですが、都の東にはどのような世界が広がっているのかは分かりません。逢坂の関は、こちらの世界とあちらの世界を分ける境界なのです。

 その関所を人が行き来します。これから関所を越えて行く人もいれば、帰ってくる人もいます。その中に、知っている人もいれば、知らない人もいます。この関を越えて、また会うことがあるかもしれないし、もしかしたら、もう会うことはないかもしれません。あなたは関の風景に、出会いと別れを繰り返す人生の縮図を見た思いがします。

 蝉丸《せみまる》

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