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女の子とウサとの哲学的会話「大人は、考えないの?」

〈登場人物〉
サヤカ……小学5年生の女の子。
ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。

サヤカ「この前、いつもウサと話しているようなことを、お母さんにきいてみたら、ちゃんと答えてもらえなかったんだけど、どうしてだろう?」
ウサ「それは、お母さんには分からなかったからよ」
サヤカ「大人なのに?」
ウサ「大人だから分からないの」
サヤカ「どういうこと?」
ウサ「大人っていうのは、サヤカちゃんが疑問に思うようなことを、疑問に思わなくなってしまった人たちのことなのよ」
サヤカ「大人になると、いつもわたしがウサと話しているようなことを、疑問に思わなくなるの?」
ウサ「中には疑問に思い続ける人もいるけれど、それはすごく数少なくて、大抵の人はね、サヤカちゃんのお母さんもお父さんも含めて、疑問に思わなくなっていくの」
サヤカ「どうして?」
ウサ「それは、他に考えるべきだと思われることが、色々と現われてくるからかな」
サヤカ「他に考えるべきことって?」
ウサ「どうすればお金を稼げるかとか、どうすれば一緒に仕事をしている人と仲良くできるかとか、ね」
サヤカ「……じゃあ、生きている意味とか、心がどこにあるかとか、そういうことには全然関心がなくなっちゃうの?」
ウサ「普通はね。そういうことを考えていても、はっきりとした答えが出ないから、そういう問いは捨てちゃうのね。そうして、答えが出そうな問いだけ考えることにするの。それが、大人になるっていうことなのよ」
サヤカ「わたし、大人にはなりたいけど、今疑問に思っていることは、捨てたくないな」
ウサ「うん、そうしておいた方がいいと思う。サヤカちゃんの疑問はね、この世界の根源……つまり、おおもとに関係するものなの。はっきりとした答えが出なくてもいいのよ。その疑問を持ってさえいればね、サヤカちゃんは、世界のおおもとつながっていることができるの。そうして、世界のおおもととつながっている人はね、そうじゃない人と比べて、人生に対する姿勢が全然違ってくるのよ」

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