自分の頭で考えるヒント6 ~あるものとその比喩の関係~

人生は旅のようなものだ、という言葉を聞いたことがないだろうか。どちらも、一つ所に立ち止まることはできず、次に何が起こるか分からないというような意味である。そう聞くと、なるほど確かになあという気持ちがする。納得、納得。

さて、しかし、この、「○○は△△のようなものだ」という言い方に少し気をつけてみよう。人はあるものについて考えるときに、それと類似する物について考えることで、安心する。人生とは何かと考えたときに、人生とは旅であると考えて、すっきりするわけだ。ここで、一つ、当たり前の事実が見過ごされることになる。すなわち、人生は旅ではないという事実が。旅というのは、あくまでこの人生の中で為される活動の一つであって、人生そのものではありえない。身も蓋も無い話をしているように思われるかもしれないが、この身も蓋も無さが、自分の頭で考える際には大切である。

あるものを何かにたとえるということは、たとえることによって、そのあるもののある部分を切り捨てることである。しかし、本当は、その切り捨てられた部分こそがそのあるものにとって重要なことかもしれない。人生は旅のようなものだと言うとき、人生の旅のようでない部分、たとえば、旅というものは自分の意志で始めるものだが、人生は自分の意志で始めるものではない、といった、人生と旅の異なった部分が無視されることになる。しかし、本当は、その「自分の意志で始めるものではない」という部分が、人生にとって重要なところかもしれない。

比喩を利用することで、人は分かったつもりになることができる。なにより、面白い。面白いことはいいことだが、面白がることによって見過ごされてしまう部分があるということは、自分の頭で考える際には、しっかりと認識しておくべきだろう。あるものの何であるかを考えるときに、比喩に頼らずに、そのものの何であるかを追い詰めていくことが、あるものについて正確に考えるということであり、実はその方が、比喩を使うより、より面白いことでもある。

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