第44首 飛び去る雁
※このノートでは、春の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。なお、【イメージ】は、現代語訳そのものではありませんので、その点、ご了承ください。
【第44首】
かへる雁 雲ゐはるかに なりぬなり また来む秋も 遠しと思ふに
《かえるかり くもいはるかに なりぬなり またこんあきも とおしとおもうに》
(後拾遺和歌集/赤染衛門《あかぞめえもん》)
【イメージ】
雁の帰る季節。
その雁の声が空高くから聞こえる。
どうやらすでに、雲の上はるかに飛び去ってしまったようだ。
再び彼らがこの地にやって来る秋の日も、今はまだ遠いと思うのに。
【ちょこっと古語解説】
○雁《かり》……鳥の名。秋に渡来し、春に北へ帰る。
○雲ゐ《い》……「雲のある所」から、大空を表す。
○ぬ……完了を表す助動詞。
○なり……聴覚による推定を表す助動詞。ここでは、帰って行く雁の声を聞いて、雁が大空高くに去っていくことを推定している。
○む《ん》……婉曲を表す助動詞。「また来る秋」と言うのではなく、「また来む秋」と言うことで、「また来ることがあったらその秋」と、断定を避けた柔らかい言い方にしている。
※コメント無用に願います。
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