イメージの百人一首11「わたの原―」
※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。
【第11首】
わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣舟
《わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね》
あなたの前に海原があります。穏やかな内海ですが、あなたの心は平穏とはほど遠いものです。あなたはこれから島流しの刑に処されるところです。島流しとは、都から退去を命じられて、遠い島へと連行され、許しがあるまで、もしかしたら死ぬまで、その島で生活しなければならないという刑罰です。あなたは時の権力者の意向に逆らって、その不興を買ったのです。もう二度と家族や友人に会えないかもしれません。
船旅を思って海を見ていると、漁師の小舟が見えます。広々とした海に浮かぶ一艘の釣舟。それはまさに今の自分の心を表しているようで、その釣船に向かって、あなたは、すでに自分が船旅に出たことを知人に告げてもらいたい、と心の中で頼みます。
参議篁《さんぎたかむら》
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