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イメージの百人一首9「花の色は―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第9首】
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
《はなのいろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに》

 季節は春です。あなたの目の前に、一本の、色あせてしまった桜があります。まだ散ってはいませんが、このところの長雨のせいで、盛りの色を見せることはできなくなってしまいました。

 そのような桜に、女性であるあなたは、自分自身の身を重ね合わせます。降り続く雨のように憂鬱な物思いにふけっている間に、いつのまにか年月が経ち、あなた自身も、色あせた桜と同様、みすみす、最も美しい時期を何もせずに過ごしてしまったのかもしれないと。

 小野小町《おののこまち》

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