イメージの百人一首83「世の中よ―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第83首】
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
《よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる》

 あなたは、この騒がしい世間に嫌気が差して、隠遁する決意をします。奥深い山の中で一人静かに暮らすことに決めたあなたが、いざ、山道を登っていくと、どこからともなく鳴き声がします。どうやら鹿の声のようです。その鳴き声はもの悲しく、聞いているうちに、あなたは心がかき乱されます。せっかく山奥に来たというのに、安心が得られない。この世の中に憂愁から逃れる道などどこにも無いのだということを、あなたは悟るのでした。

 皇太后宮大夫俊成《こうたいごうぐうのだいぶとしなり》

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