女の子とウサとの哲学的会話「心って、どこにあるの? 5」

〈登場人物〉
サヤカ……小学5年生の女の子。
ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。

ウサ「サヤカちゃんの中には、怖がる気持ちはあると思う?」
サヤカ「うん、あると思うよ。だって、夜中に目が覚めちゃったときとか、クモを見たときとかに、感じるもん」
ウサ「その、夜中に目が覚めちゃったときとか、クモを見たときとかに感じる、その感じと同じものを、他人も感じているかどうかっていうのは、分かるのかな?」
サヤカ「それは……だって、同じようにクモを見たときに震えてたら、同じように感じているんだなって分かるよ」
ウサ「でも、それは、その人のその感じを、サヤカちゃんが直接味わっているわけじゃなくて、震えている様子から、怖いんだろうなって推測しているだけでしょ?」
サヤカ「それは……そうだけど……」
ウサ「そうすると、怖がる気持ちそのものが他人の中にあったとしても、それは分からないことになるんじゃないかな。他の気持ちも同じでしょ? そうだとしたら、サヤカちゃんがすごく優秀な脳科学者で、脳の中に心があったとしても、それをその人の心だって判断することはできないんじゃないの?」
サヤカ「でも、わたしの中に心があるんだから、みんなの中にもあるはずでしょ?」
ウサ「みんなの中にもあったとしても、それがあるっていうことが、分からないのよ」
サヤカ「あるのに、あることが分からないって、そんなの変だよ……」

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