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イメージの百人一首7「天の原―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第7首】
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
《あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも》

 あなたは夜空を眺めています。その目に月が映ります。あなたの胸に、故郷のことが思い浮かびます。あなたはすでに、ふる里を離れて遠くこの地に来てから、実に30年の月日を送っています。異郷で過ごした気の遠くなるような月日。帰ろうとしても帰ることができなかった日々。今ようやく帰郷がかなって、友人知人があなたの送別の宴を開いてくれているのです。あなたは、今見ている月が、故郷の春日(=今の奈良県奈良市のあたり)にあった三笠山の上に出た月と、同じものなのだなあと感慨にふけります。

 安倍仲麿《あべのなかまろ》

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