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女の子とウサとの哲学的会話「友だちって、たくさん必要?」

〈登場人物〉
サヤカ……小学5年生の女の子。
ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。

サヤカ「ねえ、ウサ。友だちってたくさん作らないといけないのかな?」
ウサ「友だちってどんな人のこと?」
サヤカ「えっと……わたしが言っていることをちゃんと聞いてくれて、困っているときに助けてくれて、間違ったことをしちゃったときは叱ってくれて、わたしもそうしてあげたい人のことかな」
ウサ「そんな人って、たくさんいると思う?」
サヤカ「……いなさそう」
ウサ「自分じゃないのに自分のことをちゃんと分かってくれる人なんていうのは、生きているうちに一人でも出会えたらいい方よ」
サヤカ「そっか……じゃあ、友だちって一人でもいいんだ」
ウサ「うん、一人でもいいし、もしもそういう人がいなかったらね、友だちを持たなくてもいいの」
サヤカ「えっ!? 全然友だちを持たないの? ……それって、寂しくないかな」
ウサ「寂しいかもしれないね」
サヤカ「寂しいのはやだなあ」
ウサ「でもね、寂しいと思って、『自分のことをちゃんと分かってくれる人』じゃない人と付き合うのは、よくないよ。そういう人と付き合っていると、自分の心の声が聞こえなくなっちゃうから」
サヤカ「自分の心の声?」
ウサ「うん。サヤカちゃんは、クラスの子が話していることに、『ちょっと違うなあ』と思っても、話を合わせるために、その子が言ったことに賛成したことある?」
サヤカ「あるよ……結構あるかな」
ウサ「それをずっとしていると、自分の心の声、本当の気持ちが聞こえなくなっちゃうの。もちろん、いっつも本心を出すっていうことは、難しいよね。この前のウソの話でもしたけど。それでも、本心を出すときっていうのは大事で、それが『友だち』といるときなの。もしも、そういう人がいなかったら、その代わりに誰かと付き合うんじゃなくて、ひとりで、たとえば、ノートに自分の本当の気持ちを書いたり、本を読んで自分と同じ気持ちの人を探したりした方がいいのよ」
サヤカ「うーん……それでも、やっぱり、ひとりって寂しいと思うけどなあ」
ウサ「うん、寂しいかもしれないね。でも、そうやって、ひとりで自分の心の声と向き合っている人が、この世界にはたくさんいるんだって考えてみて。どこにいるかも、名前も知らないけど、そうしている人は確かにいて、そういう人たちと、サヤカちゃんは秘密の友情を結ぶことができるの」
サヤカ「秘密の友情?」
ウサ「そう。サヤカちゃんが、ひとりで自分の気持ちと向かい合っているとき、同じようにしている人がいるとしたら、その人は、サヤカちゃんの気持ちをすっかり分かってくれるはずだよね。そういう人のことも、『友だち』って呼べるんじゃないかな。覚えておいてね、サヤカちゃん。人はひとりになることはあってもね、決してひとりぼっちにはならないんだよ」

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