イメージの百人一首64「朝ぼらけ―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第64首】
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
《あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ》

 季節は冬、あなたは宇治に来ています。宇治の地は、山川が配された、清浄な地であり、気ぜわしく生きている都とまったく違った空気を吸って、あなたは、ホッとします。

 一晩過ごしたあと、明け方、宇治川のもとに来てみると、霧がかかっており、幻想的な雰囲気です。その霧がところどころ晴れるようになって、川の浅い部分に、ずっと杭のようなものが立ち並んでいるのが見えます。鮎の稚魚を捕るために設けられた網代木であり、このあたりの冬の風物詩です。改めて、あなたは冬になったのだなあと、しみじみと感じずにはいられません。

 権中納言定頼《ごんちゅうなごんさだより》

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