イメージの百人一首55「滝の音は―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第55首】
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
《たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なおきこえけれ》

 あなたは今、200年ほど前に造営された、時の為政者の離宮に来ています。当時は華やかであったそこは、今はもうすっかりと寂れています。庭園の中に作られていた滝の水も涸れているようです。

 その滝を見ながら、あなたは感慨にふけります。滝の音はもう聞こえなくなってしまいましたが、この離宮の名声だけは流れ伝わって、今もなお多くの人に、古き良き時代を思い出させるのです。

 大納言公任《だいなごんきんとう》

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