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女の子とウサとの哲学的会話「なんで宗教ってあるの?」

〈登場人物〉
サヤカ……小学5年生の女の子。
ウサ……サヤカが3歳の誕生日にもらった人語を解するヌイグルミ。

サヤカ「ウサ、宗教があるのってどうして?」
ウサ「救われたいと思うからかな」
サヤカ「救われるってどういうこと?」
ウサ「この世に生きていることに意味があると思えるようになることだよ」
サヤカ「でも、生きていることには意味が無いんじゃなかったの?」
ウサ「うん、そうなんだけど、でもね、人はなかなかそれに耐えられないのよ。特に苦しい思いをしている人はね。『どうして自分はこんなに苦しい思いをするんだろう。この苦しさにはどんな意味があるんだろう。何か意味があるに違いない。その意味を教えてほしい』って、思うの。人はね、苦しさそれ自体には耐えられるの。でもね、その苦しさに意味が無いって思うことにはなかなか耐えられないのよ」
サヤカ「その苦しさに意味をくれるのが、宗教なの?」
ウサ「そうよ」
サヤカ「でも、それって、本当のことじゃないんだよね?」
ウサ「うん。苦しさとか人生それ自体を意味づけるものは、全部間違っているって言っていいよ。そういうものが無いっていうことが、人生が奇跡だっていうことなんだから」
サヤカ「宗教を信じている人は、みんな間違っているの?」
ウサ「そう言っても構わないけど、何かを全く信じないで生きている人っていうのは、いないんじゃないかな」
サヤカ「そうかなあ。だって、わたし、神様なんか信じていないよ」
ウサ「うん、でもたとえばね、サヤカちゃんは、明日地球が滅びるかもしれないって思うことある?」
サヤカ「ええっ! ……すごくたまーに思うこともあるけど、普通は思わないなあ」
ウサ「ということは、サヤカちゃんは、明日も地球があるっていうことを信じていることになるでしょ」
サヤカ「えー……まあ、そう言われればそうかもしれないけど」
ウサ「もうちょっと宗教っぽい話をすると、サヤカちゃんは、お家の仏壇に手を合わせたり、お墓参りをするでしょ。あれは、ご先祖様のためにしていることなわけだから、ご先祖様の霊がいることを信じていることにならないかな?」
サヤカ「うーん……でも、あれは、ご先祖様の霊を信じているっていうよりは、小さな頃からそうしなさいってお母さんとかお父さんに教えられてやっていたことだから」
ウサ「そういう風に、宗教を信じている人の中には、小さな頃からそうしていたから、そうしているっていう人もかなりいるんじゃないかな。もちろん、大人になってから、自分で宗教を選ぶ人もいるけどね」
サヤカ「じゃあ、もともとは宗教は人生に意味を与えるものだったわけだけど、今ではそういう意識もなくて、宗教を信じている人もいるっていうこと?」
ウサ「そうね。もともとは何かのためにあったものが、あり続ける間に、そもそも何のためにあったのか忘れ去られちゃうものがあって、そういうものをひっくるめて『文化』って言うのよ。宗教は、文化の一つなの」

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