イメージの百人一首54「忘れじの―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第54首】
忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
《わすれじの ゆくすえまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな》

 あなたにはずっと思いを寄せていた人がおり、今日その思いが叶いました。晴れて、思い人と結ばれたのです。「いつまでもあなたのことを愛し続けます」というあの人の言葉を聞いて、あなたは幸福感に酔いしれます。

 しかし、ふと、この先のことを思うと、あなたはゾッとするものを覚えます。人の心はうつろいやすいもの、あの人の愛は一体いつまで続くのか。手に入れた幸福をいつか失うくらいなら、いっそこの幸福を抱いたまま、今日死ぬことができたらいいのに、とあなたは思うのです。

 儀同三司母《ぎどうさんしのはは》

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