イメージの百人一首63「今はただ―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第63首】
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
《いまはただ おもいたえなん とばかりを ひとづてならで いうよしもがな》

 あなたには思いを寄せている人がいます。ひそかに会っていたところ、その人の親に、二人の仲を知られてしまって、激怒されてしまいます。というのも、その人は神に仕える身であり、恋愛は厳しく禁止されていたからです。

 恋人には厳重な監視がつき、あなたは二度と会いに行くことはできなくなりました。思いを断ち切るほかないと、あなたは決意します。せめては、別れの言葉を人づてではなく、自らの口で伝えたいと思うのですが、それすらもあなたにはかなわないのです。

 左京大夫道雅《さきょうのだいぶみちまさ》

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