イメージの百人一首88「難波江の―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第88首】
難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
《なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき》

 あなたは旅の宿で一晩だけの契りを結びました。ほんの遊びだと思っていたその契りに、あなたは愛を見出してしまいます。どうしてそんなことが起こり得るのか、あなたには全く分かりませんが、しかし、それは紛れもない真実なのです。

 名も素性も尋ねないうちに別れてしまったあなたには、相手が誰なのかもう確かめようもありません。それなのにあの人のことを想うと胸が締め付けられるように苦しくなります。たった一夜のために、まるで自身を犠牲にして海路を示す澪標《みおつくし》のようにその身を尽くして、これから、あの人のことを恋しく思い続けることになるのかと思うと、あなたは暗澹たる気持ちになります。

 皇嘉門院別当《こうかもんいんのべっとう》

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