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30代は人生100年時代をどう生きるべきか? 『LIFE SHIFT』を読み直す

『LIFE SHIFT(ライフシフト)』が出版され、人生100年時代という言葉が流行ってからしばらく経ちます。
当時はあまりピンときていなかった私ですが、30代半ばになり、再び本を手にとってみたところいろいろと考えさせられるものがありました。
結婚し、子どもが生まれ、漠然と老後の人生について考えるようになったからかもしれません。

そこで今回は30代の目線で、『LIFE SHIFT』を読み直してみたいと思います。

65歳定年は現実的? 老後資金はいくら必要か

LIFE SHIFTには年代の異なる3人の登場人物が出てきます。しかし、あいにく30代のモデルがいないため、オリジナルに4人目の仮想人物を追加してみました。1987年生まれの達也です。

・ジャック 1945年生まれ(77歳)・・・平均寿命72歳
・ジミー  1971年生まれ(51歳)・・・平均寿命85歳
・ジェーン 1998年生まれ(24歳)・・・平均寿命93歳
・達也   1987年生まれ(35歳)・・・平均寿命90歳

※()年齢は2022年12月時点での年齢
※平均寿命はそれぞれの生まれ年の男性の平均値。達也の平均寿命は字mーとジェーンの平均寿命をもとにざっくりと90歳としました。

登場人物のひとりである1945年生まれのジャックは、60歳で定年を迎えた場合、平均寿命72歳までの12年の老後資金があれば問題ありませんでした。

しかし、達也は65歳で定年を迎えたとしても、平均寿命90歳まで25年間あります。ジャックよりも倍以上の老後資金が必要です。
では、25年間分の老後資金とは一体いくらでしょうか?

単純計算してみます。

定年前の最終年収が700万円として、その50%が老後の年間の生活費とした場合、年間350万円が必要です(月あたり29.1万円)。余生が25年間ですので、年間350万円×25年間=8,750万円が老後資金として必要という計算です。

定年までに貯めておくべき老後資金
・年収700万円×50%=定年後の年間生活費350万円
・定年後の年間生活費350万円×余生25年間=必要な老後資金8,750万円

※国税庁「令和2年 民間給与実態統計調査結果
」によると、60〜64歳の平均給与は年間415万円でした

8,750万円というとドキッとする金額ですが、これは年金が考慮されていません。
つづいて、年金分を差し引いて、自力で貯める必要のある老後資金を算出してみます。

65歳から年金を受給した場合、毎月の年金受給額は20万円です。
生涯で受け取る年金を計算すると、月20万円×12ヶ月×余生25年間=合計6,000万円。
先ほど算出した老後資金8,750万円から年金分を差し引くと、8,750万円-6,000万円=2,750万円となります。これが自力で貯めておく必要がある老後資金です。

定年までに自力で貯めておくべき老後資金
・月あたり年金受給額20万円×12ヶ月×余生25年間=年金受給額合計6,000万円
・必要な老後資金8,750万円-年金受給額合計6,000万円=自力で貯める必要がある老後資金2,750万円

年金は、令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況をもとに概算(65歳・男性の年金受給額)

2,750万円貯められそうな人はどれくらいいるでしょうか?
マイホームを購入した人は住宅ローンの残りもあるでしょうし、賃貸の人は家賃を支払いつづけなければなりません。そうした中で定年までに2,750万円を残しておくのは中々たいへんそうです。

ちなみに、老後の生活費を年収の50%としましたが、どれだけ生活費を必要とするかは個々人のライフスタイルによって異なります。
余生を旅行や趣味などで楽しみたいという人はより多くの資金が必要です。出産年齢も上がってきており、定年後に子どもが大学に進学するという人もいるでしょう。子どもが結婚したら、孫が生まれたら、さまざまな出費もかさみます。

こうして見てみると、30代の人たちにとって、「引退後は世界旅行をして、田舎に引っ越してのんびり過ごす」なんていうのは夢物語に聞こえてきます。

30代の私たちは、65歳以降も働いていること(収入があること)を前提とした人生プランが必要になってくるわけです。

では、30代の人たちはどう生きていくべきか?

人生のシナリオは多様化している

「高校・大学を卒業し、会社に就職して、65歳で引退、そして余生をのんびりと過ごす」というシナリオはもはやフィクションとなっています。

「いい高校・大学に進学するために」と受験勉強に励み、「いい会社に就職するために」と就職活動に明け暮れ、「家族のために」「老後のために」と会社に人生を捧げるような生き方、つまり未来のために今を犠牲にするよな生き方をしていても、その追い求めていたはずの「未来」はいつまでもたってもやってきません。
いつか、「こんなはずじゃなかったのに」「もっと好きなことをやっておくべきだった」と後悔するかもしれません。

LIFE SHIFTでは、「教育」→「仕事」→「引退」という3つのライフステージを歩むシナリオが崩壊し、マルチステージの時代に入っているといいます。

マルチステージとは、人生のステージの多様化を示します。
たとえば、社会人になってから一時的に仕事を離れて旅をしたり、大学院に入ったりするような時期があり、それから再就職し、しばらくしてから今度は起業し、その後仕事だけでなく地域のNPO活動にも取り組むようになるなど。
かつて教育は10代のものでしたが、30代や50代になってからも学び直し(リカレント教育)が当たり前になりつつあります。

新卒で入社し定年まで働き続けることが当たり前だった時代から、転職が当たり前になり、さらに起業や副業、プロノボ(専門スキルや知識を活かして取り組むボランティア活動)、サバティカル休暇(長期間勤務した従業員に一定期間の長期休暇を与える制度)なども進み、ライフステージが多様化しています。

人生を長い目で見て、今を謳歌し、同時に将来を見据えてスキルを身につけるなどといったバランス感覚を持つことが大切そうです。








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