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フォーマルウェア考 ~正装編~

みなさんはフォーマルウェア、いわゆる礼服はお持ちだろうか。
30歳半ばを過ぎて結婚式に参列する機会も少なくなったが、かつては友人や先輩の結婚式のたびに着ていく服に悩んだものだ。

今回はフォーマルウェアについての僕の考えをまとめたい。

フォーマルの3種類

フォーマルと定義される装いはそれぞれのシチュエーションやドレスコードでさらに3種類に類される
・正装
・準正装
・略礼装

今回紹介する正装はモーニングコート、燕尾服、そしてタキシードの3種類。
それぞれ着用のシーンが異なる。シチュエーションだけでなく、着用する時間帯も重要だ。

モーニングコート

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モーニングコートは男性の昼の正装で最上位正装と位置づけられている。着用シーンは内閣総理大臣の親任や叙勲の授賞式で宮中に参内する際である。また、格調の高い結婚式のホストや主賓、学校の入卒業式で教職員が着用するケースもある。

写真は英国のウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウエディングの際にベッカムが着用したモーニングコートだ。共布のジャケットにベスト、コールパンツと呼ばれるストライプのパンツ(この裾の後ろが少しだけ長い仕様はモーニングカットと呼ばれている。きれいにパンツが落ち足がすらっと長くすっきり見える)さらに、トップハットと超正統なモーニングコートの着こなしだ。
ちなみに完璧と思われたベッカム様、大英国勲章を左でなく右胸に付けるという痛恨のミスを冒してしまったようだ。

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同じベッカムのもう1枚のモーニングコートの着こなしを見てみよう。
こちらはディオールによるモーニングだ。着丈がやや短めのセミピークドラペルのジャケットにチェーン使い。シャツは小ぶりなレギュラーカラー。さらに靴は外羽根のプレーントゥ。パンツのシルエットは細めで裾もジャスト丈。まさにディオールといわんばかりのモードなモーニングだ。この写真、実はヘンリー王子とメーガン妃のロイヤルウェディングの際のもの。同じロイヤルウエディングでもここまでモーニングの着方が変わるのは興味深い。おそらく、ウエストミンスター寺院で執り行われたウィリアム王子の結婚式はより厳格で格調が高い式だったのであろう。両者の結婚式の違いを敏感に感じ取りそれぞれのモーニングをチョイスしたベッカム(のスタイリスト?)の仕事はあっぱれだ。

燕尾服

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燕尾服は夜の正装だ。ホワイトタイとドレスコードが指定されると燕尾服を着用しなければならない。宮中晩餐会や、格式の高いコンサートやオペラの指揮者は燕尾服を着用する。モーニングと異なりジャケットとパンツは共布で、ジャケットの裾が水平にカットされているのが特徴だ。正装も簡略化された現代ではタキシードにとって替わられることも多い。
昨年執り行われた即位令正殿の儀では、参列者のドレスコードとして燕尾服は、モーニングコートと並列して記載された。昼開催の即位令正殿の儀では本来なら燕尾服ではなくモーニング着用なのだ。(夜の晩餐会には本来なら夜用の正装にドレスチェンジする)
皇室の即位式というこれ以上ないフォーマルな場でモーニングでも燕尾服でもいいよというドレスコードは、現代におけるドレスコード緩和の象徴なのかもしれない。

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ちなみに、燕尾服の形状だがどこかで見おぼえないだろうか?そう、あの世界一有名なネズミことミッキーマウスが着用しているのが燕尾服なのだ。ミッキーが昼のグリーティングでも燕尾服を着用しているかどうかちょっとばかし気になるところだ。

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タキシード

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タキシードは夜の正装の一つ。準礼装と分類される方もいらっしゃるが、ここでは正装とする。
ドレスコードがブラックタイと指定されるとタキシードを着用しなければならない。着用シーンは夕方から夜にかけての結婚式やパーティ、各種式典だ。サッカーファンにはバロンドール受賞式などで各選手がタキシードでドレスアップしている姿は馴染み深いだろう。
正式なタキシードはショールカラーかピークドラペルの1つボタン、側章付きのスラックスにウイングカラーもしくはレギュラーカラーの比翼前立て(オニキスという黒のスタッズボタンでも可)のシャツを着用する。ロナウドは腕時計をしているが本来は懐中時計が望ましい。(スポンサーへの配慮だろう)
現代では、もっとも親しまれている正装の1つであり、昼夜問わず結婚式でゲストがタキシード着用している。ぼく自身も昼の結婚式であろうとタキシードを着用して参列した事がある。その際はタイをちょっと明るくして昼を意識する。

・現代の正装との付き合い方

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現代では前述の通り、ドレスコードは緩和されている。なにせロイヤルウエディングで崩したモーニングコートの着用がOKなのだから。ベッカムのヘンリー王子版モーニングコートもロナウドのタキシード姿も厳格なルール下ではNGである。

まさに重要なのはTPO(Time Place Occasion)である。

極端な例だが、同じタキシードでもバロンドールの授賞式に参加する着こなしと、友人の結婚式に参列する着方が一律である必要は全くない。

僕はこの辺のルールを理解した上で絶妙な外しと個性を活かすのが現代のドレスコードとの付き合い方ではないかと考える。晴れの日は当然ホストが主役でゲストは引き立て役だ。だが、せっかくの日にちょっとばかしお洒落したいと思うのも当然であり、ルールを理解した上でベッカムの着こなしのような絶妙な匙加減を加える事がフォーマルの楽しみ方ではないだろうか。僕はその気持ちも十分に主役を引き立てる思いやりではないかと思う。


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