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とある噺家の話~三代目・三遊亭歌笑~その5

歌笑師匠には、昔からずっと付き合いのあるお客さんが多い。
独演会に行くと、師匠自らロビーに立って、
「ああ、来てくれてありがとう」
と一人一人に挨拶している、とってもアットホームな雰囲気。

歌笑師匠は人とのつながりを大切にする。
ありきたりな言葉だけど、芸の基本に戻るうち、人間の基本にも戻っていったのだと思う。

すなわち、芸は人なり。

歌笑師匠には、もしかするとプライドが高かったとか、おべっかが下手だとか、よくは分からないけど、あらがあったのかも知れない。
だけど、芸と人を磨く大切さを悟った。
そのことを教えてくれたのは、これまでの人生で、
「師匠、頑張ってよ」
と背中を押してくれた人達だった。
歌笑師匠はその恩返しを落語に乗せて、ずっと続けているのだ。
お弟子さんの笑くぼ師匠、大須演芸場で歌笑師匠と共に、一通りの修行を積んだ方だが、僕に話してくれたことがある。
「色々な芸人さんを見てきました。本当にいろんな人がいました。
だから、私はお師匠さんで良かったと思ってます」
「お師匠さん」を「おっしょさん」と発音する所に、師への慕情がより感じられた。

歌笑師匠に出会った人はみんな、出会えて良かったと思えるのだと思う。
僕のつたない、とある噺家の話はこのあたりで。
お後がよろしいようで・・・

(おわり)


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