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『傘神様』 ショートショートnote杯

 傘神様は天界から地上を眺めて困っていた。

 朝の駅のホーム、傘でゴルフのスイング練習をしているサラリーマンに困っていた。周りの方に対して危険であるし、傘自体が迷惑がられてしまう。

 傘神様の元に、ゴルフ神様が訪ねてきた。
「傘さんね、ああいうことされちゃあ参っちゃうよ。世間からのゴルフ人気がガタ落ちだよ」
「私もああいった使われ方は不本意なんですけどね。ちゃんと雨から身を守るために使っていただきたいのですよ」

 神様達は、雨神様の元を訪ねた。どうすればいいものか相談しに行ったのだ。
「ああ。そういうサラリーマンいるよね。わかるわかる。よく見るわ。オッケー。じゃあ今日はもう午後から晴れにしちゃいまーす」
 気分屋な雨神様は雨雲を消し去った。

 晴れ渡った空に傘を買う人間はいなくなった。傘神様の表情はなんだか、閉じた傘布のように複雑であった。

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