絵描きさんの確定申告・青色申告攻略メモ(令和4年度版・同人活動対応)
絵描きの柏井ハヤトです!
初めての青色申告をするにあたり、勉強した内容などについて忘備録を兼ねて共有したいと思い、記事を公開することにしました。
この記事は主に個人事業主のイラストレーターから副業クリエイターに向けたものであることと、僕が実際に導入した「やよいの青色申告23(パッケージコード版)」の使用を前提にネット上の分散した情報をまとめたものです。
頭の回転が遅いと自負している自分にも分かるようにまとめたので、ややくどいように感じる表現があるかもしれません。そもそも内容が間違っている可能性もありますが、その点ご理解の上、活動の参考にして頂けたら幸いです。
また、内容に対するご意見、ご感想なども随時受け付けております。
最初に
後悔していること
最初の自分に伝えられるなら、言いたいことがあります。それは「PCを使え。iPadに頼りすぎるな」というのがひとつ。もうひとつは仕事を始めたら最初に会計ソフトを買え。そしてすぐに記帳を始めろ。ということです。
今思えば多くのサイトで忠告はされていた気がするものの、以下の理由によって後回しにしてしまい、結果的には大損をしていたように思います。その理由とは・・・
・元から白色申告には慣れていた。その上で最後に綺麗にまとめりゃ別にいいじゃん?って思ってたこと
・iPadへのこだわりが強すぎて、iPadだけで完結するものを探し過ぎていた
・会計ソフトの選択肢が多く、判断の根拠を得るにも知識が必要だった
・なるべくお金を使いたくなかった
今思えば愚かだったと思います。なぜなら、会計の目的は「お金の可視化」なので、記帳をするということは早期にミスに気づき改善するということにも繋がるためです。
導入の際は、以下の本を参考にしました。
勧めに従い「やよいの青色申告23(パッケージコード版)」を購入。安心のe-Tax、インボイス制度対応版である。(期限付き無料のサービスに登録すると24年度版も無料で手に入るとのこと。太っ腹!)
赤字でも確定申告(青色申告)しよう
赤字でも青色申告は推奨されています。理由は純損失(赤字)を3年間繰越出来るという点も非常に大きいと思います。
65万円控除の条件となったe-Taxも最近ではスマホ+アプリで対応出来るようになり、以前と比べて敷居が低くなった印象があります。マイナンバーカードは必須なので作っておきましょう。
進め方をまずは通しで見たい
【ソフト導入編】クレカ連携の問題と解決
会計ソフト「やよいの青色申告23(パッケージコード版)」について、インストールを完了したという前提で、主に引っかかった部分についてご紹介したいと思います。
会計ソフトは使用カードを連携登録することで入力を簡略化出来るのですが、使用しているクレジットカードを登録しようとしたら、認証出来ないという事態になってしまいました。その理由は以下の通り。
・認証のためには特定のブラウザ「internet explorer(以下IE)」が必要
・使用中のWindows11では「IE」は無効化されている
公式によるとWindows11では(IEが使えないという理由により)連携出来ないので、csvファイルをダウンロードして取り込めとのことだが、自分は完全に自動化したいのでそれは避けたいと思いました。
ポイントはWindows11の「IE」は無効化されているだけなので、有効化して動かせば良いということ。非公式ではありますが、以下の方法で起動した「IE」によってログインすると無事認証が通ったことを確認しました。
(※MS社のサポート外につき、セキュリティ上の理由から非推奨。自己責任でお願いします)
【個人事業主】始めに押さえておくこと
三分法?分記法?総記法?
青色申告を行うためネットで情報収集する際に個人的にややこしいと感じたのが「三分法」と「分記法」「総記法」です。一般的とされる三分法で進めていたのに、棚卸について調べていると分記法の記載があったため混乱してしまいました。入力して後で困らないように、まずは以下の点について押さえておきたいと思います。
・商品売買の仕訳については「三分法」と「分記法」「総記法」がある。
・一般的には「三分法」を使うとされている。
【10,000円で商品を仕入れた】
「三分法」借方:仕入高 10,000円|貸方:現金 10,000円
「分記法・総記法」借方:商品 10,000円|貸方:現金 10,000円
【10,000円で仕入れた商品を15,000円で売った】
「三分法」借方:現金 15,000円|貸方:売上高 15,000円
「分記法」借方:現金 10,000円|貸方:商品 10,000円
借方:現金 5,000円|貸方:商品売買益 5,000円
「総記法」借方:現金 15,000円|貸方:商品 15,000円
※「現金」は銀行口座なら「普通預金」、クレカなら「未払金」(支払う場合)
※上記記載の方法は「やよいの青色申告(パッケージコード版)」で自分の入力した内容に沿って、重複した科目(「分記法」借方の現金)は合算しないで記載した。
以下を参考にしました。各法のメリット・デメリットについても触れられているので是非ご覧下さい。
前期繰越(開始残高)はどうすべき?
先に結論を言うと、個人事業主の開始残高は0でも問題ないとのこと。詳しくはこちらをご覧下さい。
開業前の売掛金はどう処理する?
開業届を出す前の年には既に副業として稼いだ分の売掛金が残っている場合の処理は以下の通り。
【開業前11月~12月の売掛金10,000円が未入金の場合】
借方:売掛金 10,000円|貸方:元入金(もといれきん) 10,000円
摘要:(前期繰越)〇〇11月~12月分売上
https://www.sugu-kakutei.com/urikakekin-kurikoshisyori/
「事業主貸」と「事業主借」
・「じぎょうぬしかし」「じぎょうぬしかり」と読む
・「貯金を切り崩して事業のため使用した」というケースなどに対応する、個人事業主のみが使う特殊な勘定科目とされる
・決算時には「事業主貸勘定」と「事業主借勘定」の相殺を行う。どちらか少ない方の科目がゼロとなる。
プライベートのクレジットカードで経費を支払った時の仕訳は「事業主借」
クレジットカードは個人と事業で分けておくことが強く推奨されますが、必要に応じてデビットカードの利用を検討しても良いと思います。引き落としが即時なので計画的に使いやすいかもしれません。
カード決済の基礎知識
契約しているクレジットカード会社の締め日・支払日を確認し、利用明細のPDFをダウンロードし保存しておきましょう。電子帳簿保存法の兼合いにより7年間は確実に保存出来るように、使用PCへのローカル保存とコピーのクラウド保存を併用すると良いと思います。
クレカ決済の仕訳方法は?
例1(事業用クレジットカードによる決済)
【決済日】1月5日 借方:消耗品費 2,000円|貸方:未払金 2,000円
【引落日】3月5日 借方:未払金 〇〇円|貸方:普通預金 〇〇円
(摘要記載例:1月1日~2月28日利用分〇〇カード引き落とし)
例2(プライベートクレジットカードによる決済)
【決済日】1月5日 借方:消耗品費 2,000円|貸方:事業主借 2,000円
※こちらはシンプル。引き落とし等は考慮しなくて良い
デビットカード決済の仕訳方法は?
例1(手数料のかからない決済)
【購入日】1月5日 借方:消耗品費 2,000円|貸方:普通預金 2,000円
※こちらもシンプル。プライベートのカードなら「貸方:事業主借」となる
例2(ドル円手数料3.08%の決済)
【購入日】1月5日 借方:消耗品費 2,000円|貸方:普通預金 2,000円
借方:支払手数料 61円|貸方:普通預金 61円
https://money-kanri.com/2019/05/22/debit-card/
販売商品の記帳について
即売会での販売の記帳
当然だが最もシンプル。
【即売会で新刊本定価1500円を2冊販売した】
9月4日 借方:現金 3,000円|貸方:売上高 3,000円
受注生産グッズの記帳
「pixivFACTORY」の受注生産グッズは少し特殊になる点に注意。
記帳は以下のようにした。(もっと簡略化出来たらいいなぁ)
【pixivFACTORY製アクリルスタンド定価2500円を販売】
2月20日 借方:売掛金 2,840円|貸方:売上高 2,840円
借方:外注工賃 2,690円|貸方:売掛金 2,690円
借方:支払手数料 31円|貸方:売掛金 31円
:
4月21日 借方:普通預金 xxx-200円|貸方:売掛金 xxx-200円
借方:支払手数料 200円|貸方:売掛金 200円
(※xxx … 対象期間の売掛金合計)
配送サービス付きの記帳
書籍を自宅から配送する際に「あんしんBOOTHパック」による配送サービスの利用に伴い、以下の通り記帳した。
【新刊本定価1500円を販売し、あんしんBOOTHパックで配送した】
9月7日 借方:売掛金 1,870円|貸方:売上高 1,870円
借方:荷造運賃 370円|貸方:売掛金 370円
借方:支払手数料 127円|貸方:売掛金 127円
:
10月21日 借方:普通預金 xxx-200円|貸方:売掛金 xxx-200円
借方:支払手数料 200円|貸方:売掛金 200円
(※xxx … 対象期間の売掛金合計。通常の記帳なら貸方:売掛金は合算して入力するので「貸方:売掛金 xxx円」となる。)
出張のときに考えること
移動のため、バスや電車賃はSuicaにチャージしたポイントを使用しました。
・Suicaへのチャージは「貯蔵品」
・Suicaからの使用は「旅費交通費」
詳しくは以下を参考にしています。
自分はチャージを「貯蔵品」としたのですが、「預け金」と処理する方法もあるようです。
ちなみSuicaについては、マイナポイントによる特典のチャージを活用。マイナポイントは事業ではなく僕個人への特典なので「事業主借」としました。
例「借方:貯蔵品 2,000円|貸方:事業主借 2,000円|電子マネー入金」
出張時の飲食代について
経費になるかどうかについて「事業をしていなかったら使わないと言えるなら経費」とする考えがあり、恐らくは正しいのですが、出張時の飲食については原則とされる考え方に従って記帳しました。原則について調べた内容は以下の通りです。
・一人で飲食する場合は経費にならない
・ただし、喫茶店で書類整理するなどのケースだと珈琲代は「雑費」となる場合もある。
・一人であっても、宿泊料に付随する食事は「旅費交通費」となる(ただし別払は経費にならない)
・複数人の場合は経費。相手との目的によって勘定科目が変わる
(従業員「福利厚生費」、打合せ「会議費」、取引先「交際費」、取材相手「取材費」・・・)
自販機で購入した飲料の場合
使う機会はありませんでしたが、知識として押さえておきたいケースかもしれません。こちらは出金伝票で対応することになります。(もちろん自分のための飲料は経費にならない)
即売会(コミケ・コミティア)の帳簿付け
仕入れについては以下が参考になると思います。同人関係なら基本的に印刷会社(グラフィック社、ラクスル社、プリントオン社等)になるでしょう。これに関して例外的な記帳があるとは感じなかったので割愛します。
売上の帳簿付けや棚卸については以下のページを参考。
以下のページも。「同人活動の確定申告は利益が20万円超になってから」とありますが、これは「唯一の副業が同人活動のみ」「同人以外の副業利益も合算して20万円超なら確定申告する」という条件となるでしょう。
仮想通貨(暗号資産)はどうなる?
「仮想通貨」は国税庁の呼び方に基づいて「暗号資産」という名前に統一した方が良いかもしれません。基本的には以下の通り。
・原則として、20万を超える利益がなければ暗号資産の申告は不要
・暗号資産取引所(コインチェック等)への入金は「事業主貸」の支出
・暗号資産取引所からの出金は「事業主借」の収入
・利益差額は「雑収入」
これって経費になるの?
「書籍(イラスト集、ハウツー本など)」
・勘定科目は「新聞図書費」
・電子書籍やメルマガ購読料、図書カードも同様の扱いでOK
「ゲームソフト・ハード」
・業種への整合性があり、妥当性を説明出来るかによる。
・勘定科目は「消耗品費」または「通信費」
・業種がゲーム制作なら関連性も説明しやすい。100%経費で良いかも。
・イラストレーターやYouTuber(ゲーム実況)なら実績との関連性による。
「動画サブスク(Amazonプライムなど)」
・勘定科目は「通信費」または「諸会費」
・参考資料用途として説明可能であること。趣味も兼ねてであれば按分も検討
「有料コミュニティ(例:パレット団など)」
・勘定科目は「通信費」または「諸会費」
・上記例(パレット団など)であればFANBOX支払会費となり、他の支援先と合計して請求されるので注意。
・説明可能であること。説明資料として招待元のページをPDF化しておくと良いかも。
備品か消耗品か?
基本的には10万円未満は消耗品、10万円を超えるなら備品費と考えることになります。僕個人の身近な例で言うと、以下の通りです。
・10万円超の「ゲーミングノートPC」「iPadPro」は備品
・10万円未満の「海外製液タブ」は消耗品
(例えば、同じ性能の国産メーカー製液タブは10万円超なので備品となる)
家事按分とは?
個人事業主であれば家で仕事をする方も多いと思います。PCを動かす電気代や暖房などの使用について業務の割合分は経費になるのですが、それを申告するために行うのが「家事按分」です。その方法については以下リンク先が参考になると思います。
年末の棚卸はどう進める?
年末には本やグッズ等売れ残りの原価を計算し、純利益を定める必要があります。棚卸については以下が参考になると思います。
その他
独立一年目の場合
空白期間がなければ、前職の源泉徴収票が必要なので用意しておきましょう。前線徴収税の還付が受けられるかもしれません。
寄付金控除について
寄付金ならどれでも控除の対象となるわけじゃない点にご注意下さい。タイムリーな例として「トルコ大使館への寄付」「ウクライナ政府への直接の寄付(エンバシーオブウクライナ)」は控除の対象とはなりませんが、「日本赤十字」や「国境なき医師団」等への寄付は控除の対象になります。ふるさと納税もOK!
自動車・バイクなど
自動車について、自分は特に業務上の必要性を感じなかったのですが、必要であれば下記を参考に記帳してみると良いでしょう。
車の購入を経費に含める場合は以下
燃料費については以下
副業としてやる場合
副業の所得が20万を超えているかによって対応が変わります。
(収入じゃなくて所得)
【副業所得が20万を超えている】
・確定申告を行う
【副業所得が20万に満たない(または源泉徴収税の還付を受けない)」
・確定申告を行わず、住民税申告書を提出する。
・または、確定申告を行う
※少しでも副収入があって確定申告を行わない場合は、最低でも住民税申告書を提出しましょう。
更に自分で調べる場合
基本的には「〇〇 勘定科目」「〇〇 経費」で調べると良いかもしれません。参考にするサイトは会計ソフトを扱う企業か、税理士が顔出しで答えているサイトが良いと思います。
最後までお読み頂きありがとうございます!本記事は修正点が見つかり次第更新したいと思います。
柏井ハヤト
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