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プリンセス・スノードロップ

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―― 白雪姫には呪いと毒がつきものだ。白の公爵家の小さなお姫様は、この先無事にはいられまいよ。 (連載中)
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記事一覧

【今生編】17.長銃の夜(上)

 泣いているのを誰にも知られないよう、アリアドネは城の裏手、特にひと気のない木戸へわざわ…

【今生編】16.墓参

 翌朝一番の汽車で、エリカは煙霧京へとむかうことになった。  鉄道のほうがやや遠回りで時…

【今生編】15.森の散歩道

 雪花亭のあるニヴァリス・パークは、建物と人の密集する煙霧京市街では相当にひらけているが…

【今生編】14.カサブランカ城へ

 何時間走っても同じような風景の続く、なだらかな丘陵の牧草地にどこまでも伸びた道を、スノ…

【始祖編】13.

 もはや娘のシェヘラザードが世間にどれほど恥をさらそうが、ファーロン・ボイドの心は動かな…

【始祖編】12.

 ファーロン・ボイドには息子がなかった。  キャラバンにいるとき砂漠で娶った妻が一人娘の…

【始祖編】11.

 スノードロップ家と白雪公のなりたちを語るには、退嬰の現ワトリング王朝に三人の女王が連なる当代より、アルビオン史を数百年余さかのぼる。  まだアルビオン大英帝国が成立する以前、『白き断崖の岸辺』……アルビオン王国の時代だ。  中世アルビオン国内に勃発した百年戦争を挟み、ビーフィッド王朝は前後期に二分される。  冗長な前期の歴史が過ぎ、後期ビーフィッド王朝の趨勢が語られたのちに、王冠戦争で現ワトリング王朝が成立する。  その前期ビーフィッド王朝最初のアルビオン国王、すなわち『調

【当代編】10.昔語り

 雪花亭の使用人の中でもローズオンブレイは特に外出が多く、昔の医者仲間に会うだの、なにか…

【当代編】9.短剣の花嫁

 淡い暁光が階下にも届く朝方、地上と階下をつなぐ階段を降りてくる軽い足音があった。  家…

【当代編】8.再会のとき

 初雪までに車の運転を覚えようと、コハクはサフィルに頼んでスノードロップ家所有の屋根付き…

【当代編】7.生まれ変わりの娘

 そこらの石を拾い集め、中庭で急ごしらえしたかまどで朝夕煮炊きをし、そのかまどのそばにた…

【当代編】6.印度のサーカス団

 欧州大陸とアルビオン大英帝国の本土アルビス島を隔てるドーヴァー海峡を渡るには、大陸側か…

【当代編】5.新品執事

 スノードロップ家と父の忌があける前に、コハクはいったん大学へ戻った。  卒業までは三ヵ…

【当代編】4.女王の果樹園

 届けられたばかりの信書をたずさえ、アルビオン大英帝国中央議会宰相のシャナハン・アイギスは、王宮内にもうけられたリザベル女王の執務室ではなく、ド・ポワッソン草庵へと足を向けた。  広大な王宮の敷地は、『白雪公』スノードロップ家の煙霧京での荘園と境を接している。  その荘園の大半をニヴァリス・パークとして開放する白雪公の、町屋敷たる雪花亭と、王宮本殿をあいだにして反対側にあるのが、ド・ポワッソン草庵だ。  古ガリア語の名を持つド・ポワッソンは、『黒馬公』セングレン家現当主のダネ