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読んでもらえない系文字書きが自分の小説を添削する 3

おどろきの読んでもらえなさ。
そんな小説ばかり量産してしまう二次創作の文字書きが、自分の作品を添削していく「公開で復習する」シリーズの3回目です。

オリジナル短編小説『共に在る者』を使い、「表現の仕方がわかりにくい」や「説明が長すぎる」など、改善が必要な箇所をあげ、修正していく、という記事になっています。

私は「ビートシート」を使って小説を書いているので、これに従い前進中。

この記事は、『共に在る者』の SET UP の続きになります。
ビートシートでいうと、3つ目の項目です。

前回はこちらに。


取り扱う項目を以下にまとめました。
★マークがついている項目が、この記事で取り扱う内容となります。
☆マークは完了した項目です。

SET UP
【口上】☆
【Noteに投稿した本文】★
【問題点】☆
SET UPを書くときに困ることや気になること☆
①実を言うとこのビート、どう書いていけばいいか分かっていない☆
②全体的に状況がいまいち分かりずらい☆
③体感的に文が長い☆
【①と②の対策】☆
SET UPに必要な要素を整理する☆
◇ヒーローのひとまずのゴール☆
◇ヒーローの日常☆
◇何かが起きないと何もかも崩壊する感・停滞=死の瞬間☆
SET UPのビートとしての役割は☆
SET UPの5W1Hを決める☆
◇when、いつ☆
◇where、どこで☆
◇who、誰が☆
◇what、なにを☆
◇why、なぜ☆
◇how、どのように★
【③の対策】★
【Noteに投稿した本文 修正版】★
きっかけ


それでは、「◇how、どのように」からスタートです。


【Noteに投稿した本文】

鐘塔の影に身を潜め、キリアンは70m下の地上へと銃口をさだめた。
唇の端に微かな笑みが浮かぶ。
大聖堂正門の入り口は、青空を覆う雲の合い間から射す日の光のせいで、スポットライトに照らされたまるでステージのようで、この日を、いわくつきの大司教が最期を迎えるに相応しい場所を、天があつらえたとしか思えない。
死に際の薄らぐ意識の中で、この国を破滅へと導こうとした己の所業の数々をせいぜい悔やむといい。
万が一にも後悔する心とやらを持っていればの話だが。
先端を塔のへりにのせた狙撃銃を、立てた膝と左手でしっかりと固定する。
まもなく建物の中から、深い緑色の法衣を纏った初老の男が現れた。取り巻きたちに囲まれ悠々と歩く大司教フューラーを、スコープの中心に捉えたキリアンの長い指が引き金にかかる。
幕だ、と心のなかで言い渡し、指を引ききろうとしたその時だ。
視界がいきなり暗転し、キリアンはハッと顔を上げた。

オリジナル短編小説『共に在る者』より
SET UP 抜粋

◇how、どのように
残念ながら本文に「どのように」らしき文章は見当たらない。
つらい。
このビートの「どのように」も、「いまいま、ヒーローが、していること」に対しての「どのように」になる。 

〇how、どのように まとめ
「なにを」が「狙撃のターゲットを待っています」。
これに対する「どのように」を、本文に書き足したい。
例えば、「カウントしながら」待っているとか、「額に汗を浮かべて」待っているとかそういう「どのように」が欲しい。


【③の対策】
体感的に「文、なんか長いよね問題」。
私の小説はだいたい、「事件、まだ来ないの?」となりがちのような気がする。

本文の文章が「誰の目から見てもまじで長い」のかどうかは、わからない。
そもそも、「適切な長さかどうか」も、正直なところわからないので、そこは置いておくとしても、長いと「感じてしまう」のは確か。

原因として思い当るのは、以下の箇所。

SET UP 一部抜粋】
唇の端に微かな笑みが浮かぶ。
大聖堂正門の入り口は、青空を覆う雲の合い間から射す日の光のせいで、スポットライトに照らされたまるでステージのようで、この日を、いわくつきの大司教が最期を迎えるに相応しい場所を、天があつらえたとしか思えない。
死に際の薄らぐ意識の中で、この国を破滅へと導こうとした己の所業の数々をせいぜい悔やむといい。
万が一にも後悔する心とやらを持っていればの話だが。

長い。
しかもなんだか、かっこいいめの文章に酔っている感が大変にやばい。

これは、つまり、「キリアンの大司教への恨みつらみ」。
いわゆる心情描写にあたると思う。
私は、こんな風に、登場人物の「心情」を、こってりと「独白」させるのが大好きなんだろうなぁ。
だから無駄にスラスラと書ける、ついつい酔ってしまう、ドラマティック最高潮、しつっこさうなぎ上り。
ああ…。

思い出したいのは、このビートはSET UPですよという点。
あくまでも「事件が発生する前の現状」を伝える箇所なので、のっけから、がっつりと、「心のうちをたっぷりと描写する」のは、ちと控えた方がいい。胃にもたれる。

それから、私は人物描写も長くなりすぎる。
長いうえに、人物描写の分量も多い。
髪色がどうのとか、瞳の色がどうのとかをすぐ書きたがる。そういった人物のビジュアルが大好きなんだろうなぁ、と思うのだけれども、短編小説の、こと SET UP の場合は控えるほうがいい。


〇 ③の対策  まとめ
短編のSET UPで長くなる、事件まだこないの?になるのを防ぐため、人物のビジュアル詳細、心情描写は少なめに。独白は容量用法を守ること。


以上で SET UP の一通りの見直しは終了です。
一連の内容を踏まえて、最後に【修正版】を書いて、このビートは完了とします。


【Noteに投稿した本文 修正版】

大聖堂の脇に建つ鐘塔の中に身を潜め、キリアンは70m下の地上へと無慈悲な視線を差し向ける。
初夏の空をおおう雲、その隙間から差し込む陽光に照らされて、午後の街にはおだやかな時が流れている。
ターゲットは大司教フューラーだ。週に一度の会議を終え、彼はまもなく大聖堂の正門から姿を現すだろう。正門の前には円形の石畳がある。その円の中心で、獲物を仕留める算段だ。明日の決議で、大司教にこの国に関するすべての決定権を与えられてしまう前に、確実に成功させなければならない。
キリアンは狙撃銃の先端を、ところどころ石像で装飾された塔のへりにのせ、立てた左の膝と左手でしっかりと固定する。吹きかける風に銀色の髪がなびくと、すぐそばの石の天使たちに乗って遊んでいた鳥が二羽、ばさりと飛び立ち空へと舞う。
やがて建物の中から出てきた、深い緑色の法衣を纏った初老の男──大司教フューラー──をスコープ越しの視界に捉えた。
幕だ、と心のなかで言い渡し、指を引ききろうとしたその時だ。


今日はこの辺までにて。
次回からは、きっかけ のビートに入ります。

それではまたです。

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恵都
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