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読んでもらえない系文字書きが自分の小説を添削する 6

読まれない小説ばかりを量産してしまう二次創作の文字書きが、自分の作品を見直して、必要な場合は加筆、修正していく。
「公開で復習する」シリーズの6回目です。

この記事は、オリジナル短編小説『共に在る者』の、
ビートシート《プロットポイント1》にあたる部分について復習する内容です。

前回はこちらに。


それでは、《プロットポイント1》スタートです。

【Noteに投稿した《プロットポイント1》本文】

キリアンは肘で従者を殴りつけ、よろめく彼の気配は無視し、
銃の照準を合わせ直した。 ←プロットポイント1
丸いレンズのなか、フューラーは馬車へと乗りこんでいく。

オリジナル短編小説『共に在る者』より
プロットポイント1を含む前後を抜粋


【問題点】

ここは問題はなさそうな気がしている。ないでくれ。
ビートの位置がずれてる感とか、全体的にボヤッとしている感じなどのヤバさがない、と思いたい。

とはいっても、せっかくなので、プロットポイント1 の役割や、このビートに必要な要素をさらってみたい。

ちなみに、《プロットポイント1》からは、三幕構成でいうところの2幕となる。


【1幕の世界と2幕の世界】

2幕からは世界がガラッと変わる。
 
1幕の世界は「ザ・狙撃」。お命頂戴いたします的世界。
2幕の世界は「男同士の友情と愛情のあいだ」。相棒の存在を再確認な世界。
3幕の世界は「今からそいつを二人で殴りに行こうか」。最強バディ的な世界。
 
余談だが、本編での3幕は、「殴りに行く、のかも、しれんよなぁ?」という匂いで終わらせている。


【求めるもの、本当に必要なもの】

ビートシートを使う場合、ヒーローは、「求めるもの」を掴むために行動し、その道すがら、気づかされてしまった「本当に必要なもの」を手にするためにゴールを目指す、という流れで進んでいく。
 
本編のキリアンの場合、
 
「求めるもの」は、「大司教の命」
「本当に必要なもの」は、「従者トバイアスの存在の重さ」
 
ちなみに、「本当に必要なもの」は、書いている途中で、ニュアンスが変わっても多分問題ない。
作者の一番の課題は、「ビートの位置がずれずれなんだよな」という部分ということもあり、「本当に必要なもの」に関しては、そこまでガチガチに決めないでおく。


【新しいことを始める】

前述のとおり、2幕からは世界がガラッと変わる。
 
なぜ変わるかというと、「ヒーローが自分の意志で新しい世界に入っていったから」。
 
というわけで《プロットポイント1》では、ヒーローに、
目に見える形で、いままでとはまったく違う場所に行」って欲しい。
物理的にどこにも行かない場合は「それと分かるように、いままでとはまったく違う新しい何かを始め」て欲しい。

作者に厳重に言っておきたいのは、頼むからヒーローに、あからさまに新しいことをさせてやってくれ。
 におわせ、とかいらんぞ。

本文に戻って。
キリアンは、どんな新しい何かをしているかというと、

プロットポイント1 本文】

キリアンは肘で従者を殴りつけ、よろめく彼の気配は無視し、 ←Debate 思案 葛藤 準備
銃の照準を合わせ直した。 ←プロットポイント1
丸いレンズのなか、フューラーは馬車へと乗りこんでいく。 ←次のビート

新しい? ことをしてなくもない? ような気がしないでもない?

あんま新しいことしてないと思う。
少なくとも、あからさまに新しいことはしていない。

言いわけを一席。
作者は、

いままでは、
「引き金に指までかかっての、狙撃の3秒前だった。気持ち的には、狙撃が完了していた」だった。

《プロットポイント1》では、
「あらためて、大司教に向けて照準を合わせるところから狙撃がスタート。気持ち的には、狙撃をこれからはじめます」にしている。

「新しいことをはじめている」感をでているでしょう。

というつもりなんだと思う。
でもこれは、ハイパー伝わりにくい。
目に見える形で」ってのが弱いのだと思う。
「新しい」が伝わるような、なにか工夫が必要。
「新しい」のニュアンスをもった言葉をいれるとか試してみたいところ。


といったところで、このビートは完了とします。
下に、本文 ⇒ 一連の内容を踏まえた「修正版」 ⇒ ここまでの「修正版」の順に置きます。

プロットポイント1 本文】
 
キリアンは肘で従者を殴りつけ、よろめく彼の気配は無視し、 ←Debate 思案 葛藤 準備
銃の照準を合わせ直した。 ←プロットポイント1
丸いレンズのなか、フューラーは馬車へと乗りこんでいく。 ←次のビート

プロットポイント1 本文 修正版】
 
キリアンは逃がすまいと、スコープの中にあらためて獲物を捕らえなおす。 ←プロットポイント1

SET UPきっかけDebate 思案 葛藤 準備プロットポイント1 修正版】
 
大聖堂の脇に建つ鐘塔の中に身を潜め、キリアンは70m下の地上へと無慈悲な視線を差し向ける。

初夏の空をおおう雲、その隙間から差し込む陽光に照らされて、午後の街にはおだやかな時が流れている。

ターゲットは大司教フューラーだ。週に一度の会議を終え、彼はまもなく大聖堂の正門から姿を現すだろう。正門の前には円形の石畳がある。その円の中心で、獲物を仕留める算段だ。

明日の決議で、大司教にこの国に関するすべての決定権を与えられてしまう前に、確実に成功させなければならない。

キリアンは狙撃銃の先端を、ところどころ石像で装飾された塔のへりにのせ、立てた左の膝と左手でしっかりと固定する。吹きかける風に銀色の髪がなびくと、すぐそばの石の天使たちに乗って遊んでいた鳥が二羽、ばさりと飛び立ち空へと舞う。

やがて建物の中から出てきた、深い緑色の法衣を纏った初老の男──大司教フューラー──をスコープ越しの視界に捉えた。
幕だ、と心のなかで言い渡し、指を引ききろうとしたその時だ。
  
視界がふっと闇になった。
 
キリアンはハッと顔を上げ、気配に後ろを振り返る。
──トバイアス!
手でスコープを押さえる従者を視界に捉えると同時に、彼に肘鉄をくらわせた。小さな呻き声がキリアンの耳を素通りする。
 
キリアンは逃がすまいと、スコープの中にあらためて獲物を捕らえなおす。


次回は、おたのしみ のビートになります。

それではまたです。

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恵都
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