エッセイ【眼科の先】


眼科を出て路面電車を待っている。
電車が来るときには、「電車がきます」という表示と知らせる音楽が流れる。
繰り返されるメロディ。
どこかで聞いたことがある。
後ろにある某コンビニの入店音か。
いや、違う、
「電車がくる」音が、それと同じなのだ。


これでは、電車を待っているのか、某コンビニ店に水を買いに入ったのかどうかがわからない。


どちらが先なのだろう。この路面電車の歴史は古い。少なくとも私の祖母の幼い頃からあっただろうから、軽く100年の歴史はある。問題はいつ、この音が採用されたか、だ。


某コンビニ店がこちらの音を残したくて、あるいは感銘を受けてそうしたのか、とは考えづらい。
それとも路面電車が、某コンビニ店に入店したときに、その音に感銘を受けて、路面電車のリニューアルとしてそうしたのか、とも考えづらい。
まったくの偶然なのだろうか…


どこかで重なっていそうで、重なってなさそうでもある。
それは私にはわからない謎だ。
契約が発生しているかどうかもわからない。
そもそも同じメロディなのかも不安になってきた。



それでも一つ、今日で確信を持てたことは、
昔も今も、語り継ぎたいと思うことは確かにあるということだ。


このガタガタとうるさくゆれる路面電車も、
できてはなくなり、できてはなくなりのサービス残業を強いられて、アルバイトで必死に経営する某コンビニ店も。


そのどちらにも、語り継ぎたいと思う心があると思う。
その入り口として、このメロディは繋がったのだ、と信じたい。
そういう意味では、昔と今は決して違ったりしていない。
一つの感銘から、昔と今をつなげることができた。


面白い1日になった。

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