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小説【カフェ 灯火・・・雨】


ここは街からそう遠くはないところ。
家の東側には広がる稲穂と深くに山が見える。
西側にはラベンダーだろう花がたくさん咲いていて、その他にも白や赤やピンクの花が時々見える。
西の方に街があって、それでいてここは異世界のようで、生活にはとても適した土地だ。まさに、私の探し求めた場所だった。


私がここに来たのは半年前くらいだ。
まだこの場所のことを何も知らない。それも、面白く楽しんでいた。




あの時悩みに悩んでいた私が、ある一晩の雨のおかげで、ここにたどり着いた。


なんでもない雨の日だったが、お腹を壊していた。
雨の日はそうやって身体の具合が悪くなってしまうことが多いタイプだった。
より繊細だった私は、心の具合まで悪かった。


雨が降って、具合が悪いのか。
具合が悪いから、雨が降るのか。
私にはわからなかった。




その日もベッドの上で、悶々と過ごしていた。本を読んで気を紛らわせたり、お腹をさすって痛みを和らげたり、窓の外をただぼーっと眺めてみたり。


ふと、この雨の日が楽しみになる店を作れないかと考え始めた。



行くだけで雨を楽しめる店、
静かで何も強制されない、ただ時間を過ごすことのできる店、
そんな場所を作りたいと思ったのだ。
考えるだけでわくわくした。
頭の中だけで留めておきたかったアイデアだけれど、忘れたくない忘れてはいけないと思い、寝かけたまぶたを起こして必死に描いた。
いつのまにか、壊したお腹はどこかへ行った。




実現したのが、このお店というわけだ。
私は一度死んで、生まれ変わりここに来たのだ。
また死ぬかもしれないが、そのときはまた違う姿に生まれ変わってしまおうと思っている。
表現がとても壮大だけど、魔術的なそれではないし、そうとしか言えないのが不甲斐ない。




リンラン…



ドアに下げたすずらんの鈴が鳴る。
温かい小さな雨と、はじめてのお客さんがやってきた。


メニューは少しの飲み物と、スイーツだけです。



つづく



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