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#4 「Red Rose Speedway」 - 己の道が見えてきた【Paul McCartney Album Review】

今回のアルバムレビューはビートルズ解散後のポールにとって
4枚目のアルバムとなる「Red Rose Speedway」です。

基本情報

オリジナルリリース 1973/4/30 (US)

  1. Big Barn Bed

  2. My Love

  3. Get on the Right Thing

  4. One More Kiss

  5. Little Lamb Dragonfly

  6. Single Pigeon

  7. When the Night

  8. Loup (1st Indian on the Moon)

  9. Medley: Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands of Love/Power Cut
    Total Time 42:13

前作を「シンプルに」作ろうとしたら手抜きだと言われてしまったので
ライヴの合間にじっくりと制作されたアルバム。
「RAM」の収録漏れ曲なども含めて、30曲くらい作ったらしい。
それを2枚組で出すつもりだったけど、
前作があまりにも売れなかったのでレコード会社に止められてしまう。
しかも「Paul McCartney & Wings」名義にされる。
ビートルズ解散からまもなく3年が経とうという頃の話ですが、
他のメンバーのアルバムが高く評価される傍ら、
ポールだけはまだ「元ビートルズ」から抜け出せてなかった。

ちなみにこのアルバムの約1ヶ月前に「赤盤」「青盤」が発売されました。

レビュー

☆☆☆☆☆☆★★★★(6/10)

これまで評論家にあまり高く評価されてこなかったのが
ここに来ていきなり風向きが変わり始めます
全米チャートで1位も獲得し高く評価されます。
Wingsというバンドでの活動を通じて、ポールも漸く
ビートルズとは違う自分のカラーを出すことが出来たんですね。

ただですね、どの曲も決して悪くないのですがちょっと小粒に感じます。
1回聴いただけだと素通りしてしまいそうな素朴な作りなので、
じっくり味わうには何回か聴き込む必要がありそうです。
ビートルズで言えば「Beatles For Sale」の位置づけかな。
スルメのようなアルバム。ディスってる訳じゃないですよ、マジで。

楽曲解説

以下、アルバム内で特に好きな曲について一言ずつ。

Big Barn Bed

「RAM」に収録された「Ram On」のリプライズで、
最後に鳴っている部分を発展させて出来た曲。
アウトテイク入ってるし、このアルバムは「RAM」の続編とも言えるわけですな。

My Love

ラブバラードを書くならポールですもんね。超名曲。
エレピとストリングスアレンジの落ち着いた曲調にうっとりします。
(このエレピは「Ram On」などで使われているウーリッツァーではなく
フェンダー・ローズ。キラキラした音ですね。)
なぜだか「雨が降っている夜(しかも6月頃)」の情景を思い浮かべてしまう。

Little Lamb Dragonfly

「RAM」のアウトテイク曲。飼っていた羊の死を悼む歌だそうです。
こういう田舎志向な感じの曲がやっぱりポールっぽいと思います。

When the Night

ポールのピアノ主体で進行する曲。
前曲「Single Pigeon」もそうですが、
このアルバムはポールのピアノがいちばん美味しく聴ける気がする。

Loup (1st Indian on the Moon)

シンセサイザーを使ったスペイシーな曲。
現代ではシンセサイザーを使った曲といえば
ピコピコしたサウンドを思い浮かべてしまうものですが、
まだテクノなんてない時代です。このアナログ感が70'sっぽくて好き。

Medley: Hold Me Tight/Lazy Dynamite/Hands of Love/Power Cut

ポールお得意のメドレー曲です。
「RAM」では2曲繋いでいたのを今回は4曲。正常進化ですね。
「Hold Me Tight」の際限ない転調が好き。
そしてエンディングにはアルバム全体を締めくくるかのように
ギターでメロディをなぞっていきます。
これまでのアルバムでも同じ曲のリプライズだったり、インスト版だったり、
アルバム内に「リンク」を張るのが好きなポールでしたが、
このエンディングは「やるじゃん!」とちょっと嬉しくなりました。w

まとめ

アルバムを聴きながら、ずっと考えていたことがあるんです。
なぜポールは長いこと「元ビートルズ」から抜け出せなかったのか
何回か聴き返しているうちにふと思い至りました。

末期のビートルズがポールのものだったからです。

「ポールのもの」って言い方はちょっと語弊がありますかね。
しかしながらバンドがマズい方向に向かっていることに気づき、
リーダーのジョンを差し置いてバンドを仕切ろうとしていたのは
まぎれなくポール。
結局ビートルズは解散してしまいましたが、
他のメンバーが「俺は俺で好きにやるから」と
ビートルズから離れて新しいキャリアをスタートさせる一方で、
今まで通りの曲作りではビートルズの続きになってしまうポールは
全く違うところからスタートしないといけなかったんですね。
「Wingsらしさ」が確立できたようでよかった。

とはいえ、Wingsって実はビートルズより激しいんですよね、いろいろ……。
(何が、というのは今後のアルバムとともに解説していければと思います)

それでは、かしまさでしたー。

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