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エッセイ「ついでに私も知ってるし あんたのいいところ」

以前、仕事でミスをした時、夫に
「今日ミスっちゃった・・・」と話した。
励ましてほしかったのだ。

しかし、夫は
ちゃんと「確認したの?」と厳しかった。

自分が悪いのは分かっているが、もうちょっとやさしい言葉はないのか。とモヤモヤした。会社での夫の様子は知らないが、きっと仕事ができるのだろう。

そんな夫が仕事を辞めたいと思っていることが最近分かった。

夫も私も中年。人生も後半戦だ。嫌な思いをして日々を暮らすなんて勿体ないではないか。
「だったら、転職したら?」
と薦めた。

すると、
「転職なんて、できない。何にもできないから」
というのだ。

驚いた。
仕事ができると思っていた夫が、そんなに自分を低くみているとは。

「だって、エクセルとかすごいできるじゃん」
「エクセルなんて・・・」

そりゃぁエクセルは誰でもできるといえばできるが、夫が作成しているエクセル、例えば家のお金の管理表は

「それ誰かに提出するんですか?」

と聞きたくなるほどクオリティが高い。(身内だから説得力がないけれど)本に掲載されているかのように美しいし、グラフまで添えられている。

何においてもきちんとしているのが夫の良いところだ。
夫が洗濯物を畳むと、家事代行の業者さんかのように整頓されて、美しく積まれていく。常に頭の中が整理されているのが分かる。私の畳み方は、見えたものから適当に畳んでいくので、とっちらかっている。頭の中がごちゃごちゃしているのが丸見えだ。
どちらが、仕事のミスが起きやすいかは一目瞭然だ。
夫ならどんな仕事でも正確にこなせると思う。

ドラマ『僕の姉ちゃん』の弟の順平を思い出した。

弟の順平は仕事で失敗し、「営業とかむいてない」
「自分のいいところなんて何もない気がする」と姉のちはるに嘆く。

ちはるは弟に諭す。

あんたのいいところは別にあんたが知らなくてもいいんじゃないかい?

あんたのいいところは(友達の)たけしが知ってるし

ついでに私も知ってるし あんたのいいところ。

この場面を見て、妙に納得した。自分の良いところなんて本人は当たり前すぎて気づいていないが、周りは見ていてよく知っているものだ。

「あんなエクセル、普通の人はできないんだよ。なんにもできないってことはないでしょー」

と夫に言うと、

夫は黙っていた。
しかしその横顔は、ちょっとだけ自信を持ったように見えた。

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