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寧静 手放さない

男の子が母親にねだっていた。
「ねー 撮らせてー」
「ほんとに、ここで最後の1枚を撮るの?今日はこれで終わりよ!」
母親に渡されたカメラを男の子が構えた。
目の前にあるのは、原爆ドーム。
自分の気持ちに正直になると、男の子と同じ気持ちだった。撮りたい。
不謹慎かもしれないが、建物に洗練された美しさを感じた。

当時は広島県産業奨励館という名で、商工業の調査や相談をする施設だったそうだ。美術展や博覧会も催されていたという。
人々の賑やかな声が聞こえてきそうだ。今の時代と何も変わらない。みんな街の商業や文化を発展させようと生きていたのだろう。

戦争に進んでいったあの時代は何も特別ではなかったのではないか。

そう思うと、今とても危うい平和の上に生きている気がしてくる。

だとしたら、この平和を絶対手放したくない。
手放さない。
見上げると、美しい建物の上に青い空が広がっていた。きっと当時の人達もこんな空を見ていただろう。

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