政治家が選挙民との関係づくりを統一教会に丸投げしてはいけない

 おこがましいことですが、日本会議と関係の深い衛藤晟一参院議員が衆院落選中、私が勤務していた新聞社の支局に訪ねてこられ、私は彼に選挙必勝法としてシンガポールの与党・人民行動党(PAP)が全国会議員に義務付けている週2回の地元選挙区での住民との対話の方法を解説して差し上げたことがあります。

 対話のうち1回は相談会、もう1回は戸別訪問です。相談会は公民館の会議室を借りて、何十人来ようと順番に一人ずつ、終了するまで続けます。議員の両脇はボランティアが固め、それが銀行の頭取だったりします。結婚相手の滞在許可証の取得問題など行政とかかわりのある問題ならなんでも相談に乗り、ボランティア・スタッフたちが相談結果のフォローアップをします。

 戸別訪問の方は、住民に知らせたい新しい政策のチラシをもって、高層団地の中の住宅を一軒ずつ訪ね歩いて、説明したり、意見を聞いたりします。かれこれ四半世紀も前のことになりますが、私は同じコンドミニアムに住んでいた運輸通信大臣のマー・ボータン議員の地元での行事を見学させてもらいました。シンガポールは多民族・多言語社会ですから議員たちもたいてい3つくらい言葉を操ります。

 週2回、夕方から夜の時間はその対話でくたくたになるくらいです。どうしてPAPはそんなしんどい対話を議員に義務付けるのかと尋ねたら、マーさんは「公務員たちは間違いを犯す。われわれ政治家はそれをチェックしたり、正したりするのが仕事なんだ」といいました。彼らは皆、クリーンな人たちで、報酬も社長並みに高いですが、政治活動を支えているのは選良としての強烈な自負心でした。国民の不満や不安を早い段階から吸い上げ、対策を講じていく力、求心力が、独立以来ずっと政権を維持しているPAPにはあるのです。

 それと同じことを、私の郷里、広島のあの河井克行・案里夫妻選挙違反事件のあと、急転直下、河井克行氏後継候補として県会議員から衆院に出馬(比例単独)して当選した石橋林太郎議員にも説いて、「PAP式選挙民との対話を徹底すれば、次回、小選挙区出馬・当選も間違いなし」などと励ましました。今年春のことです。

 ところが、最新の週刊文春の報道によると、石橋議員は党員獲得などにあたってかなり深く統一教会の支援に依存していました。急な選挙準備という事情があったにせよ、これはやはりマズイです。

 まだ若いのですから、岸田総理がいうように統一教会とのつながりをここで断ち切り、本気でPAP式のどぶ板政治活動を通じて支持者の基盤を作り直してもらいたい、と願っています。

 政策の勉強も同様ですね。2世、3世の議員が多くなって、知識は豊富でも必要とされる政策を考え、実現させていく意欲のある政治家が本当に少なくなったと思います。

 さて、ここからは、フライデーの記事から引用です。芸能プロ社長の見識は立派でした。政治家にもこういう感覚を持っていてほしいです。

■政治家でもないプロダクションの社長が、旧統一教会の行動に目を光らせて、被害者を出さないようにしてきた。それは、桜田さんが芸能活動を続ければ、統一教会の広告塔として被害を拡大させてしまうという危機感からだっただろう。それなのに、政治家たちは自分が「受かるための行動」として、自分で納得して旧統一教会を利用し続けてきたのだ■

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