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教えて大西さん、ピースワンコのこと⑩一般管理費「15%」を突破していませんか?ひも付き寄付金を流用する魔術


1、寄付金から法人の運営費を引き去り 

 電卓で何度も計算し直しました。それでも結果は、「15.0018%」です。

 NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)が法人の運営費用として寄付金などから差し引く「一般管理費」の比率です。神石高原町に提出した2019年度(2020年1月期)のピースワンコ・ジャパン・プロジェクト(保護犬事業)収支決算書から計算しました。

 PWJはピースワンコへの寄付の募集にあたって、あらかじめ「ご寄付額の最大15%を事務所の管理運営費、広報や提言活動のための費用などに活用させていただいています。ご了承ください」と説明しています。

 寄付金以外が含まれる場合もあるようで「指定寄付金等のうち15%を上限にした一般管理費」と説明する場合もあります。寄付した人は、犬の保護とは無関係のところに寄付金の15%までなら回されても構わないと同意したとみなされるようです。

 事業部門の経費とは違う本部部門の経費に充当すると考えておけばよいでしょう。比率15%が妥当かどうかは別として、寄付金収入をもとにした事業費から一般管理費を差し引くこと自体に異論を唱える方はいません。

 しかし、上限を超えてはまずいでしょう。そして、できれば、一般管理費が何によって構成されているか、その計算式や実際の使いみちを財務諸表に示して欲しいと思います。

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 ピースワンコ部門の収入額合計は12億883万7千円、一般管理費は1億8134万8千円でした。細かいことのようですが、2019年度のピースワンコ事業に関しては、その上限を超えています。

 神石高原町役場とPWJにその点を指摘したところ、矢川利幸まちづくり推進課長から7月28日に2点報告がありました。

 一つ目は「審査会当日も職員が一般管理費の比率を確認したはずだが、電卓の端数設定の加減で15%を上回る部分が出てこなかった」という趣旨のお話。

 もう一つは「審査会には暫定的な決算数値を出しているので、7月末に各NPOが最終確定版の決算を再提出することになっている」という説明でした。PWJは1月末が決算期ですから3月末には決算が確定していてもいいはずですが、PWJの収支決算も暫定的なものだというわけです。

 現時点では、金額にすると2万円余りですが、一般管理費が15%以内におさまっていなければ、次年度繰越金に回すなど、3月に出した収支決算書の訂正が必要になるでしょう。

2、NGO連携資金も最高15%に

 そもそも一般管理費とはいったい何なのでしょう。政府開発援助(ODA)予算を所管する外務省がNGO(非政府組織)に無償資金協力事業の実施を委ねる場合の例をご紹介しましょう。

 役員報酬・職員給与手当から調査・研究費、広告宣伝、交際費、試験研究、開発にいたるまで21の項目が列挙されています。同じ「広告宣伝」といっても現場の事業の宣伝とは違って、それを担っているNGO・NPOが自分たちのブランドを高め優秀な人材を獲得するために行う宣伝だったりします。

 外務省は「法人が経営を続けていくのに必要な費用に充ててもらう」(川崎敏秀民間援助連携室長)と位置付けています。

 従来は5%だったのですが、NGOと外務省が定期的に開催する協議会で、NGO側から要望が出て、2019年4月、当時の河野太郎外相が最大15%に増やしていくことを発表しました。

 公益法人や認定NPOで、収入の過半を政府資金以外から得ている自立性の高い団体であれば、無償資金協力事業の助成金の15%を一般管理費として使うことが認められています。

3、犬事業の黒字は他部門へ?

 神石高原町は特にルールを作っていないようなので、PWJは最初から15%分は自分が必要だと思うところに使うと宣言してしていたわけです。

 このシリーズの1回目で取り上げたようにピースワンコ部門の寄付集めはきわめて順調で、収支は毎年「億円」単位の黒字になっています。その黒字が寄付金収入の15%以内であれば一般管理費として、本部が役員給与や研究、投資活動に自由に使えるお金になるわけです。

 他の部門も順調であるなら黒字分がもとになっている「一般管理費」はPWJの余剰金として銀行預金に積みあがっているはずですが、いったん一般管理費に姿を変えると、ピースワンコ、保護犬事業へのひも付き資金ではなくなってしまいます。

 残念なことに、ピースワンコを含めて各事業部門からいくらぐらいの一般管理費が計上されて、それがどのように使われたか、あるいは使われる予定かは事業報告書や活動計算書をみてもまったくわかりません。

4、次年度持ち越し金はどこに?

 現状では、PWJが自発的に説明することを期待するほかありません。以下はあくまで私の推測です。

 PWJには銀行預金が国内部門だけで10億円、借入金が15億円(いずれも2020年1月期)あります。仮にピースワンコ部門の余剰金が預金になっていても、ほとんどのお金は一般管理費に化けたあとだと思われます。

 いったん一般管理費になってしまえば、使途はフリーです。仮に他の部門の赤字補填や、例えば災害救助犬訓練のためのスイス研修旅行や、ヘリコプター、クルーザーを購入する資金に充当されてしまったとしても、公認された「流用」ということになることでしょう。

 犬の保護のためにと思って寄付をした方たちは、実際の使い道を知ると、がっかりするかもしれませんね。

 PWJが神石高原町に提出した2019年度のピースワンコ事業収支決算書では、珍しく「次年度繰越金」も7243万円も計上されています。ふるさと納税の募集期間を延ばしてたっぷり寄付を集めることができたからです。

 これが2020年度に確実に保護犬事業に使われて欲しいと思いますが、PWJが広島県に提出した活動報告書の財務諸表の注記「使途が制約された寄付金等の内訳」では、保護犬事業の次年度に持ち越す期末残高は0円となっています。

 7243万円の次年度繰越金はいったどこに消えてしまったのでしょう?

 まさか一般管理費を差し引いて、まだ残る余剰金まで他の部門に流用することがありうる、ということなのでしょうか?

 翌年度へのピースワンコ用の繰越金が財務諸表注記から消えた理由、大西さん、教えてくださいね。

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