(試行版)ぼくらは、それを見逃さない。⑨PWJ/SAPFの「主たる事務所」は上島町?2020年に国際学校オープン?

 NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ、広島県神石高原町、大西健丞代表理事)の国内活動を見るとき、その財源となっている「ふるさと納税」について触れないわけにはいきません。

 2018年度のPWJ活動計算書をみると、その経常収益(収入)は47億円もあるのですが、会員やサポーターからの会費収入は4億8千万円あまりに過ぎず、寄付金、交付金、助成金(ふるさと納税の寄付を含む)に依存しています。

 一番大きいのは民間助成金の約18億円ですが、ほとんどは国の政府開発援助(ODA)資金をもとにした資金を援助団体に配分するNGO/NPOのための団体、NPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)からの資金です。

 JPF発足時から大西氏が関わっているという経緯もあり、PWJはJPFから巨額の資金を受け取ってきました。事業拡大を支えた一番大きな「金づる」です。

 しかし、PWJに配分が偏り過ぎているという批判もあるらしく、大西氏は2018年5月、JPF役員を退任しました。今後、影響を注視する必要があります。

 次いで国連などからの補助金6億円、ふるさと納税交付金が5億7千万円弱と続きます。ふるさと納税をもとにした交付金は国内向け専用の資金としては最大です。

 PWJは、捨て犬の殺処分ゼロを実現するためにふるさと納税で寄付を集めていることがよく知られています。

 実は、本部のある神石高原町にとどまらず、愛媛県上島町、さらには佐賀県などで展開する地域創生の事業のために、それぞれの自治体とタイアップしてふるさと納税による寄付集めを行っています。

 しかし、それが成功しているかどうかは別です。

 上島町では、PWJへの寄付が思うように集まらなかったりして、事業が予定通り進むか不安視されています。

 このシリーズ⑧で紹介した町議会質疑の中に登場する「グローバル高校」とは、PWJグローバルシチズン・スクールのことです。それを例にとってみます。

 「自然災害などで教育の機会を失った子どもたちのための学校を作ろう!~ふるさと納税が、教育を受けられない子どもたちのための学校設立に使われます」

 PWJが運営するピースワラベ・ジャパン(Peace Warabe Japan)のサイトには、そんな呼びかけが掲げてありました。

 ピースワラベ・ジャパン。日本語は風(ウィンズ)、犬(ワンコ)、童(ワラベ)ですが、ローマ字の略称はこれもPWJです。軽いノリですが、これも大西健丞氏の個性なのでしょう。

 サイトでの説明によると、PWJは「ピースウィンズ・グローバルシチズン・スクール」を2020年度以降、広島県神石高原町や愛媛県上島町などに新設する計画です。

 学校は全寮制の国際高校で「世界中の教員や各界の第一線で活躍するリーダーたちによる指導のもと、社会変革を起こすことができる次世代グローバルシチズンに必要とされる知識やスキルを学ぶとともに、人道支援活動、地域活性化、動物福祉などの現場で実際に活動している講師陣による、実体験に基づいたカリキュラムを提供します」ということです。

 在学中の3年間支給する奨学金は一部生徒に限られますが、授業料・寮費の一部または全額(上限:1人500万円程度/年)をカバーします。国籍や住所による受給資格の制限を設けない予定です。

 もちろん、現時点では、あくまで計画です。
 
 学校開校前は、PWJが開くサマーキャンプに参加したり、日本国内の他のインターナショナルスクールに進学するための奨学金を支給するといいます。

 まず、2018年に、給付型(返済不要)の奨学金も用意して神石高原町、上島町でサマーキャンプを開きました。参加したのは4か国から17人で、専門家や地域の人たちと交流しながら「環境やジェンダーなど社会的課題について学び、解決方法を考えました」とPWJの年報で紹介されています。

 ピースワラベ事業は、村上世彰氏が2016年に設立した一般財団法人村上財団の援助も受けていています。2018年に開学した大学院大学至善館(学長 モンテ・カセム)で学ぶパレスチナ、エチオピア、スリランカからの留学生3人がピースワラベ事業の一環として村上財団の奨学金をもらっています。

 肝心のPWJによる事業資金集め、上島町役場とタイアップしたガバメント・クラウドファンディング(GCF)は不調です。

 ふるさと納税サイトの「ふるさとチョイス」をみると、上島町とPWJが全寮制国際高校開設をうたって3000万円を目標にした2017年11月末から2018年2月末までのふるさと納税募集では、39人から147万5千円の寄付があったものの、目標達成率はわずか4.5%でした。

 2019年のサマーキャンプ費用の調達などを目的に目標額を100万円に絞った2018年11月末から1月末の募集は20人から53万円の寄付にとどまり、達成率は53%でした。

 これだけ目標を下回ると、「事業にどのような影響が生じるのか」「中途半端にお金を使って効果があるのか」といった疑問がわいてきます。

 学校を作って運営するのにいくらの費用がかかるのでしょうか?そもそも気まぐれな個人の寄付に奨学金を含めて学校の運営費用を依存できるものなのでしょうか。

 PWJはその点、もっと詳しく説明をしたほうがよいと思います。

 そんなことを考えながら、上島町のふるさと納税サイトを読んでいると、不思議なことに気が付きました。

 町が支援するNPO6団体の中でPWJ、NPO法人瀬戸内アートプラットフォーム(SAPF)の名称や事業内容も紹介されているのですが、いずれも「上島町内に主たる事務所を置くNPOの支援に活用させていただきます」と紹介されているのです。

 PWJ、SAPFの本部(主たる事務所)は広島県神石高原町にあります。それなのに、愛媛県上島町では、上島町に主たる事務所があるかのように取り扱われているのです。

 果たしてそんなことは認められるのでしょうか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?