銀座のクラブ、バーは悲鳴!新型コロナ緊急融資に保証機関の壁、「風俗営業は対象業種にあらず」

1、中央区の特別資金、クラブなど排除

 国のわかりにくい休業支援も、小池百合子知事が発表した東京都独自の協力金も風俗営業を支援の対象にしています。今回の新型コロナウイルスに対応した経済対策の中で、この点は特筆すべきことだと思っていました。

 気前よく休業補償をばらまく欧米諸国に刺激を受けたのは間違いありません。大恐慌以来といわれる深刻な不況がやってきたいま、反社会勢力は別として、どんな業種であれ、営業時間の短縮や休業を余儀なくされている中小業者を守り、コロナ感染拡大防止に協力してもらおうという流れが広がっています。

 ところが、東京中央区が創設した新型コロナウイルス感染症対策緊急特別資金の仕組みを知って、驚きました。クラブ、バーがたくさん営業している銀座を抱えているというのに、それらの店を実施的に支援対象から排除してしまっているのです。

2、「保証機関の対象業種」が要件に

 中央区のホームページによると、コロナ資金はこんな仕組みです。

 おカネの使いみちは運転資金で限度額は1000万円。利率は年1.8%ですが、区の利子補給があるので本人負担はわずか0.1%です。しかも返済期間は7年(元金据え置き12 カ月以内)という好条件です。

① 新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1か月の売上高等が前年同期と比較して減少していること
② 新型コロナウイルス感染症の影響により、最近1か月の売上高等が平成31年1月から令和元年12月までの月平均の売上高等と比較して減少していること

 いずれかに該当する事業者が対象です。ただし、その前提として、以下の要件を満たす必要があります。

・中央区内に事務所または事業所を有し、中央区内で同一事業を継続して1年以上営んでいること
・法人都民税(法人)・特別区民税(個人)等の税金を滞納していないこと
・信用保証協会の保証対象業種を営んでいる中小企業者であること
・法人の場合は、中央区に事業所登記があること
・必要な許認可を受けていること

 ここには書かれていませんが、中央区内にある中央区の指定金融機関が融資を実行する金融機関になるので、メガバンクでも信用金庫でも指定金融機関に口座を開いておく必要もあります。

 どれももっともな要件のようにみえますが、くせ者は「信用保証協会の保証対象業種」というところに潜んでいました。

3、「風俗営業せず」の宣誓書求める

 写真をご覧ください。

 「現在、風俗営業又は特定遊興飲食店営業の許可を受けておらず、かつ、今回の借入金によって風俗営業又は特定遊興飲食店営業に属する事業を行うものではありません」

 東京信用保証協会は、保証の利用を申し込む業者にこんな「宣誓書」を提出させているようです。

 風俗営業は、例えばキャバレーやバーなど、特定遊興飲食店営業にはナイトクラブなどが該当し、警視庁の許可が必要です。

 東京信用保証協会が求めているのは「許可をもらって営業している」という宣誓ではありません。「許可をもらっていませんから、風俗営業は致しません」という宣誓です。

 つまり、風俗営業や特定遊興飲食店営業をしている業者が借りるお金の保証はしない、ということなのです。

「銀座で営業し、税金も納めているのに地元のサービスを受けられないとはいったいどういうこと」

 知り合いの銀座のクラブのママさんがカンカンに怒っていました。

 その話を聞いて、15日夕、コロナ資金を創設した中央区役所に問い合わせたところ、折り返し、商工観光課から電話で回答がありました。課長さんからです。

課長「(中央区の利子補給付き)融資にあたって、信用保証協会に相談してもらって、保証がもらえるかどうか確認をお願いしています」

筆者「信用保証協会が風俗営業等を対象業種にしていないのだから、区がクラブやバーをコロナ資金から排除したことになりませんか」

課長「保証が付かない場合は、信用保証協会を通さない資金、例えば日本政策金融公庫の融資をご紹介しています」

 確かに公庫も、期間や金額にもよるとはいえ、新型コロナ感染症特別貸付と利子補給を組み合わせて実質的に金利負担ゼロとなる制度を用意していているようです。

 そして、それは中央区のコロナ資金が利用できない場合の代替手段になってはいるようです。しかし、疑問はそこにあります。公庫の取引先としては「可」なのに、東京信用保証協会の取引先としては「不可」とはちぐはぐではないでしょうか?

4、日本最古の保証機関

 東京信用保証協会は1937年、戦前の不況期に設立された日本最初の保証機関です。都からの補助金などを財源として事業を行っていて、2019年3月末時点での保証債務残高は2兆8964億円です。

 職員数は600人以上、本店のほか都内に11支店を構え、取引のある企業は18万社あります。理事長は元東京都副知事で、非常勤の理事にはメガバンク役員や都財務局長らが名を連ねています。

 地味な存在ですが、企業の資金繰りに対する影響力は、融資の窓口になる一般の金融機関以上に大きいといっていいかもしれません。

 宣誓書の提出を求める理由を信用保証協会の保証統括課に問い合わせたところ、「一般論」と断りつつ、こんな回答が返ってきました。

 「宣誓書をいただくのは、原則として風俗営業や特定遊興飲食店営業を支援の対象として取り上げていないからです」

 食事が主体であったり、一般大衆向けであったりすれば、その例外的に取引先として認められることもあるようですが、女性が接客するナイトクラブやキャバクラ、男性が接客するホストクラブなど、今回も新型コロナの感染場所として取り沙汰されたような店舗は支援対象にならない、ということです。

 いつから採用されているポリシーかということはすぐには確認できないとのことでしたが、「おそらく発足当初から対象業種になったことはないのではないか」ということです。

 もちろん、こうした方針の見直しを求める声も寄せられていて、どのように対応するかは内部での検討もなされているとのことです。

 しかし、少なくとも今回の新型コロナ対応にあたっては、「風俗営業支援せず」という基本方針の変更は話題にもならなかったようです。

 東京都が休業を求める対象にはクラブやバーはもちろん、性風俗店さえも入っていて、協力金をもらうことができます。

 日本フードサービス協会の調査では、バー、クラブ、キャバレーの売上高は2兆5千億円近くあり、外食産業全体のおよそ1割を占めています。

 そのすべてが女性らの接待を伴う業態ではないにしても、新型コロナを原因とする休業や廃業は雇用にも少なからぬ影響を与えます。

 小池百合子東京都知事の目が届かないところで相変わらず前例踏襲型のお役所仕事がはびこっているようです。

 外出自粛などに起因する前例のない突発型不況に日本を代表する夜の街、銀座の灯は消えかかっています。都の影響下にある組織として、東京信用保証協会もひと工夫したほうがよかったのでは?

 

 

 

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