上限「15頭」が一人歩きする環境省犬猫数値規制①「人間目線」で対象決めた官僚と議連のひとたち
1、引退犬猫は数値規制の対象外に
2021年6月から始まる犬猫の販売業者に対する数値規制は重大な欠陥を内包しているようです。
1人あたり飼養頭数の制限という重要な問題について、環境省が重要な事実を十分に周知しないまま「繁殖犬は15頭まで、繁殖猫は25頭まで」等の数値をひとり歩きさせています。
それには例外があって、愛護団体から業界懐柔策としての抜け道ではないかという指摘もあれば、ブリーダーたちからは「引退犬猫も動物だ。同じように世話をしている」として、引退犬猫も含めて上限値をもっと大きくするよう求める声も出ています。どちらにしても、環境省に詳しい説明を求める声が日増しに高まっているようです。
しかし、ボロがでるのを恐れてか、環境省は規制案についてペット業界や動物愛護関係者に対する説明会の開催を拒んでいて、軌道修正するチャンスも自ら閉ざしているように見えます。
2、営業在庫になければ監視対象外
ポイントは繁殖業者(ブリーダー)のもとにいる犬猫をどう数えるかです。
「引退犬猫を数値規制の対象から外す」という環境省の奇妙な方針を支持している犬猫殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟(超党派)は、その根拠として第1種動物取扱業者が都道府県に提出する「動物販売業者等定期報告届出書」で、引退犬猫は「販売もしくは引き渡し」が完了したものとして扱うことをあげていました。
つまり、
・5欄 年度当初に所有していた動物の合計数(①)
・6欄 年度中に新たに所有するに至った動物の月ごとの 合計数(②)
・7欄 年度中に販売もしくは引き渡しをした動物の月ごとの合計数(③)
・8欄 年度中に死亡の事実が生じた動物の月ごとの合計数(④)
・9欄 年度末に所有していた動物の合計数(⑤)
・11欄 備考
という報告欄にあわせて、動物(犬猫)の頭数を犬猫の販売業者が記入する際、繁殖事業には使わなくなった犬猫(引退犬猫)を7の欄の「販売もしくは引き渡しをした動物」として扱うからというものでした。
そのように扱うと、⑤=①+②―③-④ となり、見かけ上は在庫の増減とその原因を把握することができる建前のようです。そしてこの営業在庫のリストにない犬猫はもともと「監視対象外」なのだというわけです。
3、見て見ぬふりをするザル規制
前提にあるのは、引退犬は「業」として飼っているわけではないのだから動物取扱業の営業用在庫から除外して、ペットとみなすという考え方です。
しかし、これはオカシイですよね。せっかく、犬猫を虐待しないように飼うための基準を数字で示す新しい規制をはじめるというのに、いままで「在庫」の犬猫頭数から外して計算していたから、これから先も営業用在庫以外は「見てみないふり」をする、というのですから。
来年6月から始める環境省の数値規制は、犬猫を飼うためのケージのサイズから一日の運動時間、健康診断の義務、世話する人の数にいたるまで具体的な数値を示して、守らせるというものです。
4、「動物目線」なら引退犬猫も同等に
これはブリーダーやペットショップなど第1種動物取扱業のみならず、譲渡団体のような第2種動物取扱業にも準用されることになっているのですから、現役の繁殖犬猫か引退犬猫か、販売犬猫か保護犬猫か、つまり営利目的か否かといった区分けに意味はありません。
引退犬猫であっても生きものです。栄養をとったり、運動したりします。高齢な分、医療的なケアも若い犬猫よりも手間がかかるに違いありません。小泉環境大臣がいうように「動物目線の基準」から規制するなら、引退犬猫も同じように監視対象に加えるべきでしょう。
同じ施設にいる犬猫を営業用どうかという「人間目線の基準」で区分けすることが望ましいはずがありません。(②に続く)
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