「刑事告発検討」はフリだけ? 宮城県、和牛の遺伝子不一致問題への対応

「当該獣医師の責任を厳しく問うていきたい」

 宮城県産和牛の遺伝子不一致問題で村井嘉浩知事は、授精に関わった獣医師を警察に告発することも検討すると表明しました。8月5日の定例記者会見でのことです。NHKも知事会見をきっかけにこの問題を初めて報道し、注目度は一段と上がりました。

しかし、知事は「家畜改良増殖法では罰則を適用することは難しいということになっている」とも発言しています。「おそらく民事上の対応ということになろうかと思いますけれども」とまで付け加えているのです。「告発」という言葉を使いながらも極めて慎重なのです。

警察への告発はフリだけということでしょうか?

宮城県畜産課に尋ねてみました。

Q 公表された17件の遺伝子不一致の場合、各種牛の活躍した時期や実勢価格等から「在庫一掃を狙って意図的に古く安い種牛を使っている」との指摘がほとんどです。「故意とは確認できなかった」と結論付けるまえに県ではそのような視点で分析をしなかったのですか?

A 「故意とは確認できなかった」=「単純な間違いである」と結論づけているわけではありません。当然のことながら、精液の価格差や間違いの内容を把握しております。しかしながら、立入検査等において、故意に行ったことの客観的な証拠となる記録等がないため、県としては、故意または過誤について判断できない状況です。現在、警察と相談をしながら本件に関する対応を進めているところです。

 客観的証拠が見つからない、というのです。つまり、疑わしいが裏付けがとれないので、どうしたらいいか警察と相談しているという段階。「おそらく民事上の対応」という言い方からすれば、警察が調べても刑事事件として立件できるかどうかわからない、という感触を得ているということなのでしょう。

 獣医師が授精を手がけた和牛の産子のDNA検査はまだ続行中です。獣医師以外の家畜人工授精師が担当したとされる授精でも遺伝子不一致が確認されていてその原因調査もまだ終わっていません。

「疑わしさ」が消えないままで全国の肉牛生産者たちが宮城県まで子牛を買いに来るでしょうか?告発するふりだけしても宮城県の家畜市場の信頼回復は難しいと思います。

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