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【考察】 カセットテープの意味

 ヨルシカ作品には、カセットテープがよく用いられています。アルバム『盗作』の初回特典には、ピアノソナタ月光が収録されたカセットまでついてきます。これは盗作おじさんが、曲を盗むときにカセットテープに録音するため、モチーフとして使っているとも取れます。しかし、『ブレーメン』、『テレパス』のMVにも登場することから、ヨルシカ作品全体に共通する他の意味もあるのではないかと考えました。

そして、それはズバリ“生まれ変わり”を象徴しているのではないでしょうか。

 ヨルシカの表現する世界は共通するものが多いですよね。夏、夕陽、月明かりなどなど。エピソードすらも共通するものを持ちます。
 小説「盗作」の中で、盗作おじさんと妻になる女性は、小ホールのステージで幼少期以来の再会を果たします。その時、妻は月明かりに照らされながら、ピアノを演奏していた。エイミーとエルマも公共施設の隣のホールでピアノを弾くエピソードがあります(エルマの日記帳参照)。

 ここで生まれ変わりをカセットテープになぞらえて、人生が終わると巻き戻されて、最初から再生されるとします。新しい人生は、一度録音したテープに上書きされていくことになる。そうすると来世はすでに録音されたテープの上を進んでいく。前世が下地として隠れているため、同じような場所、風景に出会うのではないだろうか、このように考察しました。

他にもカセットテープの巻き戻しとも捉えられる場面がいくつかあります。

『ブレーメン』のMVでは、女の子が飛び降りたとされるシーンで、場面の進む方向が切り替わります。

上靴の少年がいなくなった後も、方向が切り替わっている。その上、日が落ちていたはずが、なぜかこの瞬間、辺りが明るくなり、日が上がるんです。

『雲と幽霊』の主人公をエイミーとした場合、MVでは、亡くなったスウェーデンから日本に向かって逆方向に歩いていく。

 神秘学者ルドルフ・シュタイナーによると、人間は死後、自分の人生を映画を見るように客観的に眺めるそうです。死んだ時点から遡り、生まれる瞬間まで。MVの背景も、自分の人生で見てきたものが映されているようにも見えます。

 だからカセットテープが巻き戻され、一から再生される様を、生まれ変わりに例えているのではないでしょうか。そしてその象徴としてカセットテープが、ヨルシカ作品には散りばめられているのではないかと考察します。

 若い人には、カセットテープが何なのかすら分からない人もいるかと思いますが、ぜひヨルシカをきっかけに古いものに触れてみることもオススメします。

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