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【詩】カワイソウナハル

海辺の散歩中 

落ちてきた隕石は 空ほども大きく 

冷たく透き通った拳を振り上げ

私の身体を粉々にした


散乱する私の一部だったものは

予想とは違い

てらてらしたピンク色の臓物ではなかった


小さな肋骨の檻の中に隠れていた無数のpupa

蝶にミツバチ、カブトにテントウ


蠢く春の予感


目玉の穴からこぼれ落ちる

タンポポ、シロツメクサ、そしてヒナゲシの涙


止まっていた世界が動き出す

凪の世界が目覚め始める


私の体を犠牲にして

久しぶりに春が舞い降りた






海辺に横たわる忘れられた死体

足首をくすぐる波の満ち引き

死んだサンゴにそっくりな親指

重たげに首上げ 語りかける 空の端




私は悲しいの

…ううん

死んだことは悲しくないの


この春が悲しい

決してナニモノにもなれない春


ひとときの美しさだけが救いなの


カワイソウナハル




蕩けた紫の唇が震える

みどりの番犬がこっちを見ている

その奥に眠る 不完全変態


まだ見ぬ春は

きっとホンモノの春でありますように




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