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『どちらでもいい』読書感想。


“どちらでもいい“ことに悩み足掻き傷つき壊れそれでも立ち向かう。
過去にも未来にも居場所がない人たちへのレクイエム。

絶望が全編に満ちてるのに流動する言葉が詩のように心地よい、不思議な味わいの短編集だった。

印象的なものの感想を2篇。

『運命の輪』
”恐るに足る唯一のもの、人に危害を加えることのある唯一のもの、それは死ではない。生だ。第一、おまえはすでに、そのことをよく知っているではないか。”
浮き沈みのある人生を送る、ごく平凡な男に神は語りかける。
言葉が詩のようで、心にすとんと落ちてくる。
何度も経験していることに何度も闇雲に惑わされる人間たちの愚かさを嘲笑う超視点には不思議と包み込むような優しさがある。

『ホームディナー』
既婚者(特に男性)に是非読んでもらいたい一編。
2年おきくらいで役所から各家庭に送りつけてんもらいたいくらい。
妻の誕生日を祝うにあたって生じる夫婦間の齟齬が非常にリアル。
美味しいものを食べたいという気持ちより、少しでもいいから全ての家事から解放されるひとときが欲しいという妻の思いが旦那には伝わらない。
全ての片付けを済ませた後、鏡に映る疲れ切った自分の顔を凝視する妻の一コマに全主婦泣いてしまうはず。

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