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『消滅世界』読書感想。


性、愛、恋が切り離された近未来。
これはディストピアかユートピアか。
感じ方は人それぞれだと思う。
私個人の感想としてはディストピアだ。
社会で子供たちを見守るというコンセプトは理解できるし、良いことだと思うけれど、
この小説のようにお母さんお母さんと誰彼関係なくなつかれるのには嫌気がさしそうだし、そもそも
誰にでも懐く奴は結局誰でも良いってことでしょと身も蓋もなく考えてしまいそうだから。
心の狭い古風な人間なのです。
そして、地域子供に対する子供ちゃんという呼び方にもゾワっとさせられる。
名を持たず、個人としての人生を去勢された新人類たちは被害者なのか希望の星か。
本能というものは何千年単位では消えるものではないらしい(私たちのマイナス思考も危機回避本能の歪んだ末路らしい)ので、こんな未来はありえないと思う。
100歩譲ってあり得たとしても、全員おかっぱはやり過ぎた。
フィクションに対してあり得ないなんて野暮なことを言ってこき下ろしたくなる、スルーできないレベルの不快さを強く感じてしまうほど、あり得ない世界があり得るものとして見えてくる引力の強い小説だった。

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