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2022年9月の記事一覧

【詩】開拓者

【詩】開拓者

満月照り映える夜

田んぼの畦道になるプルーンの木の実を

ポケットいっぱいに詰め込み

家路に着く少年が1人

戦争映画に出てくるような

カーキの擦り切れたボタンダウン

彼は夢と現実の境を器用に渡り歩き

どちらかに引き上げられることに

常に不安を感じている

ひきつった笑みに似た三日月の夜

彼の放つ閃光が天に気づかれてしまい

彼は現実に釣り上げられてしまう

でも彼はうまくしてやった

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【詩】振り子

【詩】振り子

欲を言えば

蟹釣りするときに使う錘のような

…そう、

五円玉が理想です

変化のない振り子のような人生を

かっ飛ばしてくれる

逆転ホームランが欲しいのです

…いや、

結局のところ

ホームランが起こしてくれるひと風が

欲しいだけなのかもしれません

おろしたてのトイレットペーパーのような

素朴で甘やかなひと風が

今の私には必要なのです

ヨーヨーの振り子が作り出す

チープな日

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【詩】宿借り

【詩】宿借り

腑におちぬ生命の矢が

回り回って水底に落ち

螺旋でできた貝の穴

閉ざされた世界に安寧す

私は1匹の小さなヤドカリ

魑魅魍魎

群雄割拠

周りは獣だらけなの

できれば傷つきたくないの

そう

それだけなの

それだけなのに

身体はどんどん膨張し

私を棲家から追い出そうとする

変わりたくないの

できれば傷つきたくないの

そう

それだけなの

それだけなのに

生きることと変

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【詩】不眠

【詩】不眠

眠りを妨げる口づけに囚われて

全てのvision は意味をなさず

一握りの砂として消えていく

かたち作られるはずだった

夢は霧散し

味気ない現実だけが

道を塞ぐ岩石のごとく

不毛に鎮座する

私の何が悪いのか

どうしてこうなってしまったのか

考えてもわからないし

考える気力も湧かない

そんな夜には右半身に宿る

悪魔の轟きと戯れながら

赤い地下鉄に舞い降りる

殺人鬼の軌跡

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【詩】晩夏

【詩】晩夏

思い出は記録に成り下がり

恋焦がれたあの人すら記号に変えてしまう

瞬きやのたびに移り変わる景色が寂しくて

狂ったようにシャッターを押し続けたあの日

記録の紙切ればかりが

どんどん大きくなり

それをあの人と私は呼ぶ

本当は誰でもないことを

知っているはずなのに

微笑み首をかしげ答える

夏の日の偶像

また騙された

弔いは終わり

秋が始まる

振り向いたときの

手遅れと共に

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【詩】独り言

【詩】独り言

眠れない夜の奥底から

天使の足音が聴こえてくる

海のさざなみよりも

規則正しく

弓矢の飛ぶ速さで

私を過去へといざなってくれる

あの日手を差し伸べなかった後悔や

ひとりよがりだったあの選択

残酷な好奇心で踏みつけた過去

全て包み込んで

しゃらしゃらんと音の鳴る

羽衣で包んで

拭い去って

もしよかったら

また朝に迎えに来て欲しい

微睡の中で思う

独りよがりの独り言

【詩】感冒

【詩】感冒

人間の体液と脂身のような味のする

ココナッツヨーグルトを口にし

パソコンを開いて朝が始まる

庭の自生のミントから感じる

爽やかな香りに潜む尿香の悪意

スポーツカーのような光沢のある

ブルーの甲虫だけが美しさを独り占めしている

啜るコーヒーは泥水よりは少しマシだけれど

入れ立てなのに出がらしの味がして

濃いめの麦茶のように

カップの底まで透けて見える

透けたドブ川に閃く

大き

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【詩】再構築

【詩】再構築

人を人たらしめるものを求めて

ひたすらこねくりまわして

かたち作られたのが私です

心臓肥大の祖父がこしらえた

毛細血管のように必死に

祖母のすい臓に広がった

良性ポリープのように豊潤に

生き続けることだけを

目的とした存在が私なのです

私は後悔しています

何ものにもなれたはずの私なのに

母の切り取られた乳房や

叔母の卵巣の代わりになることが

できなかったのですから

人を

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【詩】遺物

【詩】遺物

後悔が旋回する人生に目的地はない

穴を掘り埋めてしまうか

土壁の中へ押し固めてしまうか

どちらにしようか迷っているうちに

終わる人生もある

底光する闇の中

埋められた後悔が

幾億年の時を超えたとき

美しいオパールあるいは

虎目石に変わることもありうる

それだけが希望で

その時だけが

ただ待ち遠しい

【詩】世紀末

【詩】世紀末

指にひと匙の悪が宿る

篝火が夜の闇を拭うように

光を暗く染め上げていく

自由意志という名の洗脳で

組み上げられたマリオネットが

生贄として捧げられしとき

変化は平常に変わり

ユートピアは終わりを告げる

ディストピアの入り口に立ち

未来を占う枝切れのように

私は今ここに立ちすくみ

木枯らしに抱かれる夢を見ている