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火星ナツミ
2022年9月26日 18:41
満月照り映える夜田んぼの畦道になるプルーンの木の実をポケットいっぱいに詰め込み家路に着く少年が1人戦争映画に出てくるようなカーキの擦り切れたボタンダウン彼は夢と現実の境を器用に渡り歩きどちらかに引き上げられることに常に不安を感じているひきつった笑みに似た三日月の夜彼の放つ閃光が天に気づかれてしまい彼は現実に釣り上げられてしまうでも彼はうまくしてやった
2022年9月29日 17:16
欲を言えば蟹釣りするときに使う錘のような…そう、五円玉が理想です変化のない振り子のような人生をかっ飛ばしてくれる逆転ホームランが欲しいのです…いや、結局のところホームランが起こしてくれるひと風が欲しいだけなのかもしれませんおろしたてのトイレットペーパーのような素朴で甘やかなひと風が今の私には必要なのですヨーヨーの振り子が作り出すチープな日
2022年9月24日 18:54
腑におちぬ生命の矢が回り回って水底に落ち螺旋でできた貝の穴閉ざされた世界に安寧す私は1匹の小さなヤドカリ魑魅魍魎群雄割拠周りは獣だらけなのできれば傷つきたくないのそうそれだけなのそれだけなのに身体はどんどん膨張し私を棲家から追い出そうとする変わりたくないのできれば傷つきたくないのそうそれだけなのそれだけなのに生きることと変
2022年9月22日 17:30
眠りを妨げる口づけに囚われて全てのvision は意味をなさず一握りの砂として消えていくかたち作られるはずだった夢は霧散し味気ない現実だけが道を塞ぐ岩石のごとく不毛に鎮座する私の何が悪いのかどうしてこうなってしまったのか考えてもわからないし考える気力も湧かないそんな夜には右半身に宿る悪魔の轟きと戯れながら赤い地下鉄に舞い降りる殺人鬼の軌跡
2022年9月20日 18:10
思い出は記録に成り下がり恋焦がれたあの人すら記号に変えてしまう瞬きやのたびに移り変わる景色が寂しくて狂ったようにシャッターを押し続けたあの日記録の紙切ればかりがどんどん大きくなりそれをあの人と私は呼ぶ本当は誰でもないことを知っているはずなのに微笑み首をかしげ答える夏の日の偶像また騙された弔いは終わり秋が始まる振り向いたときの手遅れと共に
2022年9月18日 19:05
眠れない夜の奥底から天使の足音が聴こえてくる海のさざなみよりも規則正しく弓矢の飛ぶ速さで私を過去へといざなってくれるあの日手を差し伸べなかった後悔やひとりよがりだったあの選択残酷な好奇心で踏みつけた過去全て包み込んでしゃらしゃらんと音の鳴る羽衣で包んで拭い去ってもしよかったらまた朝に迎えに来て欲しい微睡の中で思う独りよがりの独り言
2022年9月15日 19:41
人間の体液と脂身のような味のするココナッツヨーグルトを口にしパソコンを開いて朝が始まる庭の自生のミントから感じる爽やかな香りに潜む尿香の悪意スポーツカーのような光沢のあるブルーの甲虫だけが美しさを独り占めしている啜るコーヒーは泥水よりは少しマシだけれど入れ立てなのに出がらしの味がして濃いめの麦茶のようにカップの底まで透けて見える透けたドブ川に閃く大き
2022年9月12日 18:15
人を人たらしめるものを求めてひたすらこねくりまわしてかたち作られたのが私です心臓肥大の祖父がこしらえた毛細血管のように必死に祖母のすい臓に広がった良性ポリープのように豊潤に生き続けることだけを目的とした存在が私なのです私は後悔しています何ものにもなれたはずの私なのに母の切り取られた乳房や叔母の卵巣の代わりになることができなかったのですから人を
2022年9月6日 17:18
後悔が旋回する人生に目的地はない穴を掘り埋めてしまうか土壁の中へ押し固めてしまうかどちらにしようか迷っているうちに終わる人生もある底光する闇の中埋められた後悔が幾億年の時を超えたとき美しいオパールあるいは虎目石に変わることもありうるそれだけが希望でその時だけがただ待ち遠しい
2022年9月2日 20:37
指にひと匙の悪が宿る篝火が夜の闇を拭うように光を暗く染め上げていく自由意志という名の洗脳で組み上げられたマリオネットが生贄として捧げられしとき変化は平常に変わりユートピアは終わりを告げるディストピアの入り口に立ち未来を占う枝切れのように私は今ここに立ちすくみ木枯らしに抱かれる夢を見ている