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1/30 Queen+Adam Lambert Rhapsody Tour @ナゴヤドーム

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の熱も覚めやらない中、唐突に来日公演が発表されて大騒ぎになったのが2019年の春ごろだったか、既にヨーロッパツアーは始まっていたので「来日したら素敵だよね〜」とは言いつつマジで来るなんて思ってなかったのでとにかく気が動転した記憶がある。

前回2016年の武道館の時、これが最後だろうと思って観に行っていたのでまさかもう一度観れるなんて...(しかも今度は遠征しなくても名古屋で観れる)と嬉しく思う反面、心配だったのはチケットが手に入るかどうかだった。

映画公開前の武道館でさえチケットを手に入れるのにものすごく苦労したのに、今度は映画効果で新しいファンがわんさと増えた後だ。武道館3DAYSからドームツアーにサイズアップしたとはいえ、前回以上の争奪戦となる事は易々と想像できる。

地方公演だからまだマシと思う方もいるかもしれないが、名古屋は関東からも関西からも楽に足を伸ばせる土地なうえツアーファイナルなので、東京大阪のチケットが手に入らなかった人が流れ込んでくる可能性が大きく、かなりの長期戦になるだろうと覚悟した・・・

のだが、なんとイープラスの初回抽選で運良くチケットが手に入ってしまった。胸毛のある御神体の写真をiPhoneの壁紙にしていたのが効いたのかもしれない。

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胸毛のあるご神体


ともかく、2度目のQueenのライブを目撃する権利を手にした訳だ。

まずいきなり今回のライブの総評だが、「フレディ・マーキュリーのいないQUEENとアダム・ランバート」から「本格的にアダム・ランバートをフロントに据えた、2020年代のQUEEN」へと脱皮しようとしている印象を受けた。大胆な映像演出の導入や新しいファン向けに映画で取り上げられたナンバーが多かったこともあるが、それを一番強く感じたのは今回演奏された「Bohemian Rhapsody」でフレディの映像が使われず、中間のオペラ部分以外の全てのパートをアダムのボーカルで通していたことだ。

2005年のQueen+ポール・ロジャースの時から、この曲はスクリーンにフレディの映像を映し、フレディの声に合わせて演奏されるという演出が取られていた。それはどこまで行っても、ポール・ロジャースやアダム・ランバートというボーカルの力をもってしても「QUEEN=フレディ・マーキュリー」というイメージを観る側もバンド側も振り切れなかった事の表れだったんじゃないかと思う。

が、そもそもアダムやポールが起用されたのは「フレディの代わりになろうとしなかった」という理由だったはずで、実際自分も「フレディのモノマネみたいなボーカルを連れて来るなら昔のライブビデオを見た方が良い」と思っていた・・・にもかかわらずフレディの幻影を引きずり(あんな偉大なシンガーを引きずるなという方が無理な話だが)、ライブなのにスクリーンの中でフレディの歌う「Bohemian Rhapsody」に声援を送っていたわけだ。

それを振り切ったきっかけはやはり映画「ボヘミアン・ラプソディ」なのだろう。映画の大ヒットは70年代の再現を求めるリアルタイマーだけでなく「今のQUEENを観たい!」という若いファンの急増をもたらした。その要望への答えが「フレディではなくアダム・ランバートが歌う『Bohemian Rhapsody』」だったのではないかと。

また現在はQueen ExtravaganzaやGod Save The Queenなどの公認トリビュートバンドも存在するので、本家本元の自分たちがフレディのいた時代のバンドを再現しなくてもいい、と吹っ切れたというのもあるのかもしれない。

かといって映画以前からのファンを軽視していたわけではない。今回のセットリストはほぼ全てのアルバムから最低1曲づつ選曲されており、「Somebody To Love」「Don't Stop Me Now」などの人気曲はもちろん「In The Lap Of The Gods...Revisited」「Dragon Attack」といったアルバム曲まで演奏され、その総数は30曲近くにものぼる。オープニングSEなんて「Innuendo」のオーケストラバージョンで度肝を抜かされたし、サポートメンバー紹介でキーボードのスパイク・エドニーが「Death On Two Legs」のイントロを披露する(これはどうやら名古屋限定のお遊びだったらしい)など、ディープなファンを意識した部分も多い。何曲かはフル尺でなくワンコーラスに縮められた曲もあったが、それは決して手抜きでなく、限られた時間の中に新規ファンからリアルタイマーまで満足できるセトリを詰め込もうとしたための処置だと想像できたので残念とは思わなかったし、むしろそのサービス精神が嬉しかった。

セトリの中での一番のサプライズはやはり「Doing' All Right」だろうか。前身のSMILE時代(1968年頃)に作曲されたナンバーだ。SMILEのメンバーだったブライアンとロジャーがアダムとともに見事なハーモニーを奏でる様は感慨深い。

個人的には近年のツアーではセトリ落ちしていた「'39」が復活していたのがポイント高い。そう言えばこの曲は映画でカットされてはいたものの撮影自体はされていたようなので、それを受けての選曲だったのだろう。「I'm In Love With My Car」から「Bicycle Race」という乗り物つながりの選曲は笑ってしまったが、これらも最近は演奏されていなかった曲なので予想外だった。そして日本公演という事で忘れてはいけない、「手をとりあって」「I Was Born To Love You」ももちろん(観客の合唱と共に)演奏された。

また「新しいQUEEN」を感じたもう一つの部分として、ブライアンのギターソロ・コーナーが一新されていた事があげられる。デビュー時から伝統芸の如く行われてきたブライアンのコーナーだが、細かい変化はあったものの、その内容は悪く言えば40年間代わり映えのない演奏だったと言わざるを得ず、ギターソロというよりはブライアンによるギターインスト曲という趣だった(いくつか出ているライブ盤を聴くと、フレーズがほとんど変化していないのが分かる)。しかし今回のソロコーナーはドヴォルザーク「新世界より」のモチーフを引用した新しいものとなり(日本限定で?「赤い靴」のフレーズも入っていたが)、さらにはブライアンが小惑星に乗って浮かび上がるという衝撃の演出も加えられた。今考えると、もしかしたらアレはJAXAのはやぶさ2が捉えた「リュウグウ」だったのかもしれない。

そして演出面でかなり掴まれたのはアンコールでフレディが登場してコール&レスポンスをかましてきたシーンだ。それだけでもかなりアガるのだが、曲は歌わずさっと引っ込んでアダムにバトンを渡すが如く「We Will Rock You」になだれ込むのは少年漫画のワンシーンのようだった。泣かせるじゃないの。

もちろん100%完璧なショウだったとは言わない。サポートメンバーが入っていたとはいえロジャーのプレイには衰えを感じざるを得なかった(ブライアンの出したテンポについていけず遅くなってしまうシーンはたびたび見られた)し、会場のの構造上せっかくの映像演出が見えない部分も多かった。セトリについても日本ツアーで外れた「Fat Bottomed Girls」「Machines」も聴きたかったなあとか、唯一選曲されなかった「Flash Gordon」からの曲も聴いてみたかった(「Flash」をアダムが歌ったら絶対ハマるはず!)とか、いろいろとある。

しかし今回のツアーはあくまでも脱皮途中、つまり過渡期であり、「2020年代のQUEEN」はまだ完成していない。もしこのままQ+ALの活動が2~3年続けば、もっとすごいライブになる・・・と、少なくとも自分は確信している。

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多分見る側は多かれ少なかれ「これが最後かも・・・」と思ってるだろうけども、個人的にはこれで最後と言わず、さらに進化したQUEENが見られることを願ってやまない。THE SHOW MUST GO ON!

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