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2024年度診療報酬改定

速報】2024年度診療報酬改定の詳細が決定

高齢者救急の増加にらみ地域包括医療病棟入院料を新設、生活習慣病関連の報酬は厳格化

2024/02/14

加納亜子=日経ヘルスケア

行政・制度

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 厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)は2024年2月14日の総会で2024年度診療報酬改定案を了承し、武見敬三厚生労働相に答申した。賃上げへの対応として、新たな評価料となる外来・在宅ベースアップ評価料や入院ベースアップ評価料を新設し、入院基本料や初再診料、外来診療料などの基本報酬も引き上げる。

 一方、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病と脂質異常症、高血圧を除外するほか、生活習慣病管理料と外来管理加算の併算定を不可とするなど、生活習慣病を中心とした管理料の要件を厳格化する。また、重要課題に据えていた高齢者救急への対応としては、10対1看護配置の「地域包括医療病棟入院料」(1日につき3050点)や、協力医療機関が急変した介護保険施設の入所者を入院させた際に算定できる「協力対象施設入所者入院加算」(200~600点)などを新設する。

 そのほか、医療DXによる情報連携、医療・介護連携、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理に関する項目が多数盛り込まれた。2024年度改定は、高齢者人口がピークを迎える2040年を見据えて各医療機能をさらに整理する内容になったといえる。

■厚生労働省関連サイト
答申について

 2024年度の改定率は、技術料に当たる本体部分を0.88%引き上げる。その上で、40歳未満の勤務医・勤務歯科医・薬局薬剤師、事務職員、歯科技工所などの従事者の賃上げに0.28%、看護職員、病院薬剤師、前述の職種を除くその他の医療関係職種の賃上げに0.61%、入院時の食費基準額の引き上げに0.06%を充てる。一方で、生活習慣病を中心とした管理料や処方箋料の効率化・適正化により0.25%を削減する方針が昨年12月の大臣折衝でまとめられた。

 引き上げ分の大半が賃上げに割り当てられ、純粋な入院・外来医療の運営には厳しい見直しになる。加えて、医療資源投入量により沿った評価体系となり、質の高い医療の提供に重きが置かれた。

「ベースアップ評価料」の新設で賃上げを実現

 看護職員、病院薬剤師等の医療従事者の基本給を、2024年度にプラス2.5%、2025年度にプラス2.0%とするための特例的な対応として設けられるのが、ベースアップ評価料だ。外来・在宅医療を手掛ける医療機関に勤務する看護職員、薬剤師、その他の医療関係職種の賃金改善については、外来・在宅ベースアップ評価料(I)で評価。外来・在宅ベースアップ評価料(I)だけでは賃金増率が1.2%に達しない無床診療所では、外来・在宅ベースアップ評価料(II)で評価する。

外来・在宅ベースアップ評価料(I)(1日につき)

・初診時 6点
・再診時 2点
・訪問診療時
イ 同一建物居住者以外の場合 28点
ロ イ以外の場合 7点

 併せて、40歳未満の勤務医・勤務歯科医・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所に勤務する歯科技工士などの賃上げは、雇用形態が多様で一律の加算等での評価が難しいため、入院基本料や初再診料等を引き上げることで対応する。

高齢者救急への対応を目的に「地域包括医療病棟入院料」を創設

 賃上げ対応のほか、2024年度改定の重点課題の1つとして掲げていたのが、高齢者救急への対応だ。高齢化の進展により増える高齢者救急への対応を見据え、高齢救急患者を積極的に受け入れる体制を整え、リハビリテーションや栄養管理、入退院支援、在宅復帰等の機能を包括的に評価する「地域包括医療病棟入院料」(1日につき3050点)が新設される。新たな入院料が設定されるのは、2014年度改定の地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料以来10年ぶりとなる。

 救急医療提供体制を整える負担を考慮し、地域包括ケア病棟入院料1(40日以内)の2838点よりも高い点数が設定されるほか、看護補助体制加算(1日につき160~240点)や夜間看護補助体制加算(1日につき105~125点)、夜間看護体制加算(1日につき71点)、看護補助体制充実加算(1日につき5~25点)など、人員配置に関する加算を多数設ける。看護配置10対1以上が求められ、主に急性期一般入院料2~6を届け出る病棟からの転換が見込まれる。

 改定の議論では、急性期一般入院基本料の整理を求める意見も示されていたことから、地域包括医療病棟入院料の算定状況により、次の2026年度改定で急性期一般入院基本料の見直しが進むと考えられる。

 加えて、介護保険施設等の入所者の病状急変時への対応の充実も図る。介護保険施設の協力医療機関を対象とした加算として、協力対象施設入所者入院加算(200~600点)を新設。高齢者救急の受け入れ体制を充実しつつ、医療介護連携を強化し、高齢者の重症化予防に取り組む病院を評価する。

生活習慣病管理の評価は厳しい見直しに

 厳しい見直しとなりそうなのが、生活習慣病を中心とした管理料だ。複数の報酬項目で重複評価されていることを指摘する意見や、報酬項目が多く「どの点数が何を評価しているのかが分かりにくい」と整理を求める声が寄せられていた。改定率の決定においても、効率化・適正化により0.25%を削減する方針が示されていた。これらを踏まえて2024年度改定では、生活習慣病管理料の算定要件を緩和する一方で、外来管理加算との併算定を認めないこととするほか、特定疾患療養管理料の対象疾患を見直すことで、評価の重複を解消する方向が示された。

 具体的には、特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病、脂質異常症、高血圧を除外。処方料・処方箋料の特定疾患処方管理加算の対象疾患も同様の見直しを行い、現行の同加算1(現行は月2回、1処方につき18点)は廃止し、加算2の要件を見直して点数を66点から56点(月1回)に引き下げる。

 糖尿病、脂質異常症、高血圧を主病とする患者に対して算定できる生活習慣病管理料は、検査や注射などを包括する同管理料(I)と、包括しない(II)に区分する。また、一定の処置や検査等を必要としない患者に対して計画的な医学管理等を行うことを包括的に評価した外来管理加算などとは併算定を不可とする。さらに、「少なくとも1カ月に1回以上の総合的な治療管理」の施設基準を廃止し、28日以上の長期投薬やリフィル処方の交付が可能であることを自院の見やすい場所に掲示することを求める。

 これまで生活習慣病の患者に対して、特定疾患療養管理料、外来管理加算、特定疾患療処方管理加算を併算定してきた医療機関は少なくない。2024年度改定では、生活習慣病患者に対する診療は生活習慣病管理料での評価に一本化し、その他の患者については特定疾患療養管理料等で評価する形に整理する。

地ケア病棟入院料や療養病棟入院料は医療資源投入量に基づく評価に

 地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料では、入院の長期化に伴い医療資源投入量が減ることから、「40日以内」「41日以上」と入院期間に応じて評価を見直す。療養病棟入院基本料の医療区分とADL区分は、現在の9区分から疾患・状態に係る3つの医療区分、処置等に係る3つの医療区分、3つのADL区分に基づく27分類およびスモンに関する3分類の合計30分類とし、医療資源投入量に基づく評価に見直す。

 そのほか、回復期リハビリテーション病棟入院料では、入院料1・2に専従の社会福祉士の配置やFIM(機能的自立度評価法)の定期測定、口腔管理体制の整備を要件とする。さらに、運動器リハビリテーション料の実施上限単位数を引き下げる。

 報酬項目の見直しは多岐にわたる。政府が進める医療DXの推進においても、複数の報酬項目が新設される。オンライン資格確認により得た診療情報・薬剤情報を診療に活用する体制を整え、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスを導入する体制への評価として、医療DX推進体制整備加算(8点)が設けられる。在宅医療の診療計画を作成する際にオンライン資格確認等システムや電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋により得られる情報を活用することを評価する在宅医療DX情報活用加算(10点)が新設されるほか、へき地診療所における患者が看護師等とオンライン診療(DtoPwithN)を受けた場合を評価する看護師等遠隔診療補助加算(50点)なども創設される。

 「シリーズ◎ウオッチ 診療報酬改定」では、各項目の詳細な内容について順次リポートしていく。

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2000年富山国体少年男子メディカルトレーナー 2001年富山県立氷見高等学校男子ハンドボールメディカルトレーナー 2021年ハンドボール日本代表チームにメディカルトレーナーとして合宿に参加 2023年富山ドリームススタッフ