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酸素飽和度の過大評価によりCOVID-19治療遅延が発生

パルスオキシメーターで測定した経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の過大評価のために、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者に対する治療介入に遅れが発生している実態が報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学のAshraf Fawzy氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に8月24日掲載された。過大評価は人種/民族にかかわらず、再入院リスクと有意に関連しているという。

 パルスオキシメーターは、有色人種では酸素飽和度を過大評価しやすいことが知られているが、そのこととCOVID-19に対する治療判断の遅延、および臨床転帰との関連は明らかになっていない。Fawzy氏らは、2020年3月~2021年10月に米国内186の急性期病院へ入院したCOVID-19患者の医療データを用いてこれらの点を検討した。

 解析対象は、SpO2と血液ガス分析によって動脈血酸素飽和度(SaO2)が同時(10分以内)に測定されていた2万4,504人(平均63.9±15.8歳、女性41.9%)。人種/民族は、白人が41.4%、ヒスパニック系32.2%、黒人16.0%、アジア人を含むその他の人種/民族10.4%。解析の結果、有色人種ではパルスオキシメーターによるSpO2がSaO2に比し、有意に過大評価されることが確認された。白人との調整平均差は、黒人では0.93ポイント(95%信頼区間0.74~1.12)、ヒスパニック系0.49ポイント(同0.34~0.63)、その他の人種/民族0.53ポイント(0.35~0.72)だった。

 次に、COVID-19に対してレムデシビルやデキサメタゾンの有効性が明らかになった2020年7月以降の入院患者の中で、入院時点のSpO2が94%以上であり酸素投与不要と判断され、その後SpO2とSaO2が同時測定されていた8,635人のサブセットを作成。入院後の同時測定の結果、SaO2のみが94%未満となり酸素投与を要すると判断されたケースを、「治療必要性の認識の遅れ」と定義した上で、人種/民族別に比較すると、白人を基準とする調整オッズ比(aOR)が黒人は1.46(1.23~1.72)、ヒスパニック系は1.18(1.01~1.39)で有意に高く、その他の人種/民族は1.23(1.00~1.52)だった。

 入院からレムデシビルまたはデキサメタゾンの投与開始に要した時間は、「治療必要性の認識の遅れ」がなかった患者では中央値6.5時間(四分位範囲2.0~21.3)であるのに対して、「治療必要性の認識の遅れ」が発生していた患者では同7.3時間(2.8~23.4)であり、後者の群は入院から48時間以内にレムデシビルまたはデキサメタゾンによる治療が行われる確率が有意に低かった〔調整ハザード比(aHR)0.90(95%信頼区間0.83~0.98)〕。この結果は人種/民族にかかわらず一貫していた(交互作用P=0.45)。

 また、「治療必要性の認識の遅れ」は再入院リスクの高さとも有意な関連があり〔aOR2.41(1.39~4.18)〕、この関連も人種/民族にかかわらず認められた(交互作用P=0.14)。なお、院内死亡率や入院期間と「治療必要性の認識の遅れ」との関連は非有意だった。

 著者らは、「パルスオキシメーターによるSpO2の過大評価が、人種/民族にかかわりなく、COVID-19治療の遅れと再入院リスクの上昇につながることが示された」と結論。また、「トリアージや治療方針の決定などにおいて、COVID-19患者に公平なケアを提供するため、パルスオキシメーターの精度向上が極めて重要と言える」と付け加えている。

 なお、数人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

2000年富山国体少年男子メディカルトレーナー 2001年富山県立氷見高等学校男子ハンドボールメディカルトレーナー 2021年ハンドボール日本代表チームにメディカルトレーナーとして合宿に参加 2023年富山ドリームススタッフ