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iPadProで3Dスキャンしながら考える

新型iPhoneが発表されてからさらに注目が集まっているように思える3Dスキャン。LiDAR搭載機は限られていますが、土木・建築系からFAB界隈まで、僕の周りでは俄かに盛り上がっているように思えます。精度は限られるとはいえ、スキャンできる機材が身近にあり、フリーソフトのソフトウェアも充実してきたこともあり、これまでよりも楽しく3Dを扱うことができるようになってきました。

大量の写真群からモデルを生成するフォトグラメトリや、赤外線での距離測定や地点の色情報でモデルを生成する点群方式などがあります[*1]。僕はひとつ前の型のiPadProを用いて、アプリのScaniverseで3Dスキャンをしています。後述の*.objファイルがテクスチャ付きで生成でき、モデリングソフトのblenderや3D CADソフトのFusion 360にインポートして使っています。

マルシェで使う予定の会場をスキャンし、必要な工作物の配置を検討したり、臨時で使う駐車場の配置を検討したりと、徐々にスキャンしてから検討することが増えてきました。特にScaniverseがほとんど1/1スケールでスキャンできるので(もちろんわずかの誤差はあるけど)、モデルを配置しながらの検討に適してるんですね。

iPadProを両手に抱えてスキャンする

小脇に抱えるほどの大きさがあるiPadProです。両手にしっかりと抱えてスキャンします。スキャンしやすい場所なら一筆書きで、しにくい場所では360回転して移動を繰り返してスキャンするとうまくいく傾向にあります。

スキャンのしやすい空間とは、コンピュータ上で差分が認識できる空間。つまり、ちょっとごちゃっとしているところの方がスキャンしやすかったりします。一方で、のっぺりしていた差分のわかりにくい場所では、ぐるっとしても始まりと終わりでスキャンデータがずれてしまうことも少なくありません。

のっぺりした駐車場は左のように一筆書きするといくつかの点でズレが生じてしまい、右のように一時停止と周囲のスキャンを繰り返すことでスキャンができた[*2]。

夏場はスキャンしてる最中に熱でクラッシュしまくるという問題はあったけれど、手元にある機材でここまできれいにスキャンできるのかと毎回技術の進歩に驚きます。大きすぎる場所はやったことないですが15x15m程度なら安心してスキャンすることができると思います。

データをソフトに取り込む

スキャンしたら空間をモデルにします。ピン角が欲しいという場合を除いて、ほとんどの場合において空間は標準クオリティで十分でしょう。書き出しはShareボタンからojtファイルを選んでいます。そのままiMacに転送し、zipを回答すると3つのファイルがあります。拡張子がobjとなっているファイルがあれば、それをモデリングソフトでインポートしましょう。blenderの場合はファイルからインポートです。Fusion 360は開く>マイコンピュータから開くで指定します[*3]。

これは本殿へと向かう神社の階段と側溝をスキャンしたもの

blenderでテクスチャがついていない場合は、3Dビューのシェーディングを「テクスチャ」にしましょう。白いっぽいモデルだったものに上記画像のようにテクスチャがついているはずです。

モデルを追加する

同じようにFusion 360でつくったデータをblenderに持ってきたり、そのまた逆にobjファイルをFusion 360に持っていくこともできます。ただしFusion 360ではテクスチャが表示されないのでお気をつけください。

Fusion 360でスキャンデータを読み込み、この側溝と階段横にベンチの足が乗るようにしたいので高さを確認しながらツーバイフォー材の脚のサイズを調整します。スキャンデータがきちんと角度が出ているおかげで、座面が水平になるように長さ関係を把握できるのはとてもうれしいですね。雰囲気を確認するために再度、blenderにベンチのデータを持っていき、位置合わせをしていきます。なお、Fusion 360はテクスチャを書き出せないので、手間だけどblender上で設定する必要があります(2021年10月現在)。

次はリアルにつくってみる

これで足の長さの検討ができました。これからは階段を登ったり降りたりする時に重くなりすぎないよう構成を検討したり、持ち運びと補完しやすさを両立するような造形にしたいと思います。

これ以外にも駐車スペースの配置を考えたり、モデリングした簡易テントでのブースの配置計画など、いろんな場面で3Dスキャンはこれからもその効果を発揮してくれることでしょう。抽象的な平面計画よりも具体的な3Dデータでの議論はスピーディーなだけでなく、空間的な議論にこれまで阻害されてきた人々の参加も可能にしてくれそうです。



[*1] iwamaさんの「iPhoneで始める3Dスキャン生活 https://note.com/iwamah1/n/n5df9a5daaae4」などに詳しいです
[*2] 人力でMatterportみたいなことをする
[*3] クセのある表記でたまに忘れるのでお気をつけて→Autodesk Fusion 360 でファイルをインポートする、または開く方法

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