夜が来た

部活終わりに教室に戻ると、クラスメイトの山下が私の水筒を転がしていた。

文武両道で人気者の山下の歪んだ性癖に私の水筒が巻き込まれているのだろうか

教室の窓からは墨のような液体が漏れ出て、
やがて巨大な黒い手となって放課後の夕日を掴んだ

その瞬間空を飛ぶカラスが空中で止まり、17時のチャイムは同じ音階を刻み続けた。

山下は時間を止めた。私はその瞬間を見た。

山下は全裸になり言葉にならない言葉を吐き出し続けた末、私の水筒に入っているお茶を頭から被った。「うぉーーーーーーー!!!」

そして巨大な黒い手は太陽に溶け空に広がって夜が来た。

山下の存在は気がつけば視界から消えていた

しかし私の水筒は空っぽで蓋が空いたまま転がっていて山下の存在がそこにあった事を証明した。

山下は何かに恐れていた。

将来のこと

定められようとしている未来のこと

わたしは水筒を拾って空を眺めた。
山下に朝は来るだろうか

水筒からは黒い液体が滴り落ちていた


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